
マンションに設置されている機械式駐車場は、限られた敷地を有効活用できる便利な設備です。
しかし、経年劣化による修繕やメンテナンスには、継続的なコストがかかります。
特に管理組合にとって、将来に備えた費用計画を立てるためには、維持費の相場を知っておくことが欠かせません。
この記事では、国土交通省のガイドラインをもとに、機械式駐車場の修理費用や維持管理にかかる費用について学んでいきます。
機械式駐車場の種類と修理費の目安(令和6年6月改訂)
機械式駐車場は構造や稼働方式により複数のタイプがあり、それに応じて修繕費も異なります。
以下は、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改訂)」に基づく、修繕工事費(月額換算/1台あたり)の目安です。
なお、ここでの「1台」とは「1パレット=車1台分の収納スペース」あたりの費用を指します。
タイプ | 特徴 | 修繕工事費(円/台・月) |
---|---|---|
2段昇降式(ピット1段) | 地上1台・地下1台で構成。上下動のみで出し入れ可能。外観は平面駐車場のように見えることも。 | 6,450円 |
3段昇降式(ピット2段) | 地下2台を活用し収納台数を増やせるが、出庫に時間がかかる場合もある。 | 5,840円 |
3段横行昇降式(ピット1段) | 横方向の移動も可能で利便性が高い。構造がやや複雑で修繕費がやや高め。 | 7,210円 |
4段横行昇降式(ピット2段) | 地下2段+地上2段で高密度収納が可能。構造が非常に複雑で、修繕費も高額。 | 6,235円 |
※修繕費の金額はあくまで目安であり、個別の設備の年数や使用状況によって上下する可能性があります。
修理費用の管理で重要なポイント
維持費は機種や使用年数、稼働頻度などに左右されるため、一律ではありません。
特に構造が複雑な横行昇降式や多段式は、部品の劣化や不具合の発生頻度が高くなる傾向があり、修繕コストもかさみやすいとされています。
そのため、修繕積立金の見直しを定期的に行い、必要に応じて駐車場専用会計を設けて管理する方法も効果的です。
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機械式立体駐車場の使用料は管理費や修繕積立金に充当または別会計管理が可能であり、透明性向上のため国交省指針では別会計が推奨されている。マンション理事はコスト管理で将来の修繕に備えるべき。
まとめ
機械式駐車場の維持には、定期的な点検や部品交換、将来的な修繕工事が必要であり、その費用は構造や方式によって大きく異なります。
国土交通省の最新ガイドラインでは、設備ごとの平均的な修繕費が示されており、これをもとにした費用計画は、管理組合にとって重要な指針となります。
特に、構造が複雑な機種を導入しているマンションでは、長期的な修繕費の蓄積と駐車場専用会計の導入が不可欠です。
修繕積立金をただ増やすのではなく、「どの設備に、いつ、どのくらいの費用がかかるのか」を見える化することが、持続可能なマンション運営の第一歩となるでしょう。
出典:国土交通省:マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改訂)
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