
機械式駐車場の塗装工事は、可動部やセンサー類など特殊な構造を含むため、一般的な建物の塗装とは異なる注意点があります。工事の手順だけでなく、住民への事前対応や業者選定まで含めて計画しないと、トラブルにつながることも珍しくありません。
この記事では、機械式駐車場の塗装工事を実際に進める際の工程ごとの注意点と、管理組合として押さえておくべき住民対応・業者選定のポイントを解説します。
塗装工事の工程と管理組合のチェックポイント
機械式駐車場の塗装工事は、以下の工程で進行します。各工程で管理組合として確認すべきポイントを整理しました。
工程1:車両移動・養生
作業前に駐車中の車両を移動し、塗装しない箇所(センサー、操作盤、配線など)をシートやテープで養生します。
管理組合の確認ポイント:
- 住民への車両移動日時の事前案内は十分か
- 代替駐車場の確保はできているか
- 養生の範囲と方法は業者と事前に打ち合わせたか
工程2:下地処理(ケレン)
錆や汚れ、古い塗膜を除去して、新しい塗料が定着する下地を作ります。ケレンの丁寧さが塗装全体の品質を左右する最も重要な工程です。
管理組合の確認ポイント:
- 事前の現地調査で腐食箇所が把握され、補修方針が決まっているか
- ケレン前後の写真記録を業者に依頼しているか
工程3:補修(必要に応じて)
ケレン作業中に、鉄板に穴が開いている箇所や強度が低下している箇所が見つかった場合は、発錆箇所を切断し、溶融亜鉛めっきの塞ぎ板をボルト止めで取り付けて補修します。溶接で取り付ける方法もありますが、溶接は周囲のめっきや塗装を傷めるため、溶接箇所から再び錆が出やすくなる点に注意が必要です。ボルト止めであればめっきを傷めずに補修できます。
管理組合の確認ポイント:
- 工事前の現地調査で補修が必要な箇所が把握されているか
- 補修方法(ボルト止めか溶接か)は協議の上で決めているか
- 補修箇所と費用が見積もりに含まれているか
工程4:下塗り(プライマー)
金属部分に防錆プライマーを塗り、今後の腐食を防ぐ下地を作ります。
管理組合の確認ポイント:
- 使用する塗料のメーカー名・種類は仕様書に記載されているか
- 塗布範囲は事前に確認できているか
工程5:上塗り(立駐用塗料2回塗り)
下塗り(プライマー)の上に、立体駐車場専用の耐候性塗料を2回塗りして塗膜を完成させます。下塗り1回+上塗り2回の計3回塗りが基本です。
管理組合の確認ポイント:
- 計3回塗りが仕様通りに実施されているか
- 途中経過の写真記録を業者に依頼しているか
工程6:可動確認・最終点検・引き渡し
塗装完了後、駐車装置の動作確認を含む安全チェックを実施します。塗料がセンサーや可動部に付着していると、動作不良の原因になります。
管理組合の確認ポイント:
- 管理組合の立ち会いのもとで動作確認を行っているか
- 全パレットの昇降動作、センサーの反応を確認しているか
住民対応で押さえるべき3つのポイント
塗装工事は住民の日常生活に影響を与えるため、丁寧な事前対応が不可欠です。
1. 早めの告知と工事の必要性の説明
工事期間中は一時的に駐車場が使えなくなるため、早めの案内が重要です。「なぜ今、塗装工事が必要なのか」を分かりやすく伝えることが、住民の理解と協力を得る鍵になります。
主な伝達手段:
- 掲示板での周知(工事日程・時間・影響範囲)
- ポスティング資料の配布(車両移動日時・工事概要)
- 質問や不安が多い場合は説明会の開催も検討
2. 代替駐車場の確保
工事期間中は該当区画が使えなくなるため、利用者の車両を一時的に移動させる必要があります。移動が必要な車両は、塗装対象のパレットに駐車している車両だけでなく、隣接する列の車両も含まれます。隣の列はシートで養生しても塗料が飛散するおそれがあるためです。
代替駐車場の確保は業者が手配するケースと管理組合が手配するケースがあるため、事前にどちらが対応するかを明確にしてください。
なお、工区を分けて順番に施工すれば全区画が一度に使えなくなることは避けられますが、工区を分けるとその分費用は高くなります。住民の利便性とコストのバランスを考慮して判断してください。
3. 苦情・クレームへの対応窓口の明確化
塗料の臭気や作業音、作業車の出入りなど、住民がストレスを感じる場面もあります。管理会社と連携し、苦情が出た際の一次対応窓口と対応フローを事前に決めておくことが重要です。
業者選定で最も重要なのは「機械式駐車場の構造への理解」
機械式駐車場の塗装は、構造を熟知した専門業者に依頼することが前提です。一般の外壁塗装業者が作業すると、塗装中に装置のセンサーやチェーン、制御盤などを破損させてしまうリスクがあります。
業者を選ぶ際は以下を確認してください。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 専門実績 | 機械式駐車場の塗装工事を過去に複数実施しているか |
| 構造の理解 | 可動部・センサー・制御盤への配慮ができるか |
| 工事記録 | 施工前後の写真や作業報告書を提出できる体制があるか |
| 再稼働対応 | 塗装後の動作確認と不具合対応を責任もって行うか |
塗料がセンサーや可動部に付着して動作不良が起きるケースや、養生の際に装置を傷つけて修理費が別途発生するケースは、構造を理解していない業者に依頼した場合に起きやすいトラブルです。
よくあるトラブルと管理組合の対応策
| トラブル | 原因 | 管理組合の対応策 |
|---|---|---|
| 工事後に装置が動かない | 塗料がセンサーや可動部に付着 | 引き渡し前に管理組合立ち会いで全パレットの動作確認を実施 |
| 装置の破損 | 構造を理解していない業者の養生・作業ミス | 機械式駐車場の塗装実績がある専門業者に依頼する |
| 臭気・騒音への住民苦情 | 塗料の揮発成分、ケレン作業音 | 事前に予測される影響を掲示・告知し、住民の理解を得ておく |
| 追加費用の発生 | 事前の現地調査が不十分 | 工事前に現地調査を丁寧に行い、補修箇所を事前に把握した上で見積もりを出す業者を選ぶ |
よくある質問
Q. 塗装工事中、駐車場は何日くらい使えなくなりますか?
規模や工区の分け方によって異なります。全体の工期の目安は、小規模(2段5列程度)で1〜2週間、中規模(3段7列程度)で2〜4週間、大規模(複数基)で1〜2ヶ月程度です。工区を分けて施工する場合は、1工区あたりの期間はその分長くなりますが、使えない区画を最小限に抑えることができます。
Q. 工事の途中で追加費用が発生することはありますか?
しっかりとした専門業者であれば、工事前に現地調査を行い、腐食の程度や補修が必要な箇所を事前に把握した上で見積もりを出します。そのため、工事中に「想定外の腐食が見つかった」という理由で大幅な追加費用が発生することは、本来あってはなりません。事前の現地調査を丁寧に行う業者を選ぶことが、追加費用トラブルを防ぐ最善策です。
Q. 塗装後に装置の動作不良が起きた場合、業者に対応してもらえますか?
塗料がセンサーや可動部に付着して起きた動作不良は、塗装業者の施工が原因です。引き渡し前に管理組合立ち会いのもとで全パレットの動作確認を行い、問題があればその場で指摘し、手直しを求めてください。
Q. 雨の日は工事が中止になりますか?
はい、塗装工事は天候に大きく左右されます。雨天の日は塗料の乾燥・定着に影響するため、基本的に作業は中止になります。そのため、工期には天候による予備日を含めた余裕のあるスケジュールを組むことが重要です。
まとめ:準備と業者選びが工事の成否を分ける
機械式駐車場の塗装工事は、各工程で管理組合としての確認ポイントがあり、住民への事前対応と業者選定が工事の成否を大きく左右します。
工程ごとに写真記録と報告書の提出を求め、引き渡し時には管理組合の立ち会いで全パレットの動作確認を行うことが、トラブル防止の基本です。
業者選定では、機械式駐車場の構造を熟知した専門業者に依頼することが最優先です。構造を理解していない業者に任せると、装置の破損という塗装工事とは別のトラブルを招くリスクがあります。
塗装工事の必要性や業者選びに迷う場合は、中立の第三者に相談することも有効です。適切な準備と計画で、トラブルのないスムーズな工事を実現してください。










