
機械式駐車場の「パレット」は、日々の使用や風雨にさらされる中で少しずつ劣化し、錆が進行します。
そのまま放置すれば、安全性が損なわれ、重大な事故や資産価値の低下につながる恐れもあるため、定期的な塗装によるメンテナンスは非常に重要です。
しかし、実際に塗装工事を検討する段階になると、「どの業者に頼めばよいのか」「管理会社の提案は高すぎるのでは?」と悩まれる理事の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、機械式駐車場に適した塗装の基礎知識と、業者選びのポイント、注意すべきコスト構造や見積チェックの観点まで、わかりやすく解説していきます。
錆がもたらすリスクとは?
パレットの錆は、主に塗膜の劣化によって起こります。
塗膜が剥がれると鉄部がむき出しになり、空気中の酸素や水分と反応して腐食が進行します。
そのまま放置すると、以下のようなリスクが高まります。
リスク内容 | 概要 |
---|---|
騒音・動作不良 | 錆びによってパレットの動作が不安定になり、振動や異音が発生 |
車両の汚損(錆汁) | 雨や結露によりパレット表面の錆が溶け出し、車両のボンネットや屋根に付着することがある |
重大事故の可能性 | パレット破損により、車両の転落・巻き込み事故などの恐れがある |
とくに「錆汁で車が汚れた」といった苦情は、居住者の満足度や管理組合への信頼にも直結するため、早期の対応が重要です。
パレットの仕上げと塗装周期の目安
パレットの表面仕上げには大きく分けて2種類あり、それぞれ耐久性とコスト、メンテナンス周期が異なります。
仕上げ方法 | 特徴 | 耐用年数(目安) |
---|---|---|
塗装仕上げ | 表面に塗料を塗布。劣化しやすい | 約5〜7年 |
亜鉛めっき仕上げ | 金属表面を亜鉛で覆う防錆処理。最近の設備では亜鉛めっき仕上げが主流 | 約10〜15年 |
多くの築年数が古いマンションでは、初期コストを抑える目的で「塗装仕上げ」が採用されているケースが一般的で、実際には5年程度で再塗装が必要になることも珍しくありません。
ただし、塗装の劣化スピードは一律ではなく、風通しの悪い立地・海沿い・地下ピット構造など、周辺環境や使用状況によって大きく異なります。
そのため、一律の年数ではなく、現場の状態を見たうえでの判断が重要です。
なぜ管理会社経由の見積は高いのか?
マンションによっては、現在契約している点検業者(メンテナンス会社)を通じて塗装工事の見積もりが出されるケースが一般的です。
しかし、その内容を見て「高すぎるのでは?」と感じることもあるはずです。
その理由には、以下のような構造的な要因があります。
- 中間マージンの存在:管理会社 → 点検業者 → 協力塗装業者、と複数の業者が関与しており、そのぶん価格が上乗せされやすい
- 価格競争がない:相見積もりを取らずに一本化してしまうと、適正価格かどうかの判断が難しくなる
- 断れない雰囲気:慣例的に依頼している業者への遠慮から、他業者への見積依頼がしづらいことも
対策のひとつ:業者の「リプレイス」も視野に
現在の点検業者が、外部業者による塗装工事を嫌がる場合、いっそのこと独立系の点検業者へ乗り換える(リプレイスする)ことも検討に値します。
独立系は大手メーカー系に比べて柔軟な対応が可能で、点検費用そのものも安くなる傾向があります。
長期的なコストダウンにもつながるため、塗装対応をきっかけに業者選定を見直す良い機会となるでしょう。
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外壁塗装業者ではNG?業者選びの落とし穴
「塗装工事ならどこでも一緒」と思われがちですが、機械式駐車場の塗装には特別な知識と配慮が必要です。
業者の種類 | 特徴 | 推奨度 |
---|---|---|
外壁塗装業者(住宅向け) | 一般住宅の外壁塗装が主業務。機械装置への理解が乏しく、思わぬ故障リスクも | ★☆☆(非推奨) |
駐車場専門業者 | 駐車場構造や動作機構を理解し、専用塗料と工法で施工できる | ★★★(推奨) |
機械式駐車場は、精密な制御機器と複雑な構造を備えた装置で構成されています。
リミットスイッチやセンサーへの塗料飛散、動作不良などを防ぐには、専門業者による施工が必須です。
信頼できる業者か?見極めのチェックリスト
以下のポイントを押さえておくことで、施工品質と安全性を担保できる業者かを見極めることができます。
チェック項目 | 確認の意味 |
---|---|
機械式駐車場の施工実績があるか | パレット構造・動作特性に精通しているかどうか |
専用塗料を使用するか | 駐車場特有の使用環境に対応できる塗料か |
工期や工程が住民配慮されているか | 養生計画や施工中の利用制限が丁寧に説明されているか |
安全対策や事故防止策が明確か | 車両や人への影響を最小限に抑える配慮があるか |
管理組合特有のルール・運用を理解しているか | 理事会の承認手続きや掲示物ルールなどに柔軟に対応できるか |
まとめ
機械式駐車場のパレット塗装は、見た目の改善だけでなく、安全性と資産価値の維持にも直結する重要な工事です。
しかし、依頼する業者を誤ると、施工不良や早期劣化、事故のリスクすら伴うため、慎重な判断が求められます。
とくに管理会社や点検業者経由の見積はコスト構造を見直す余地があることが多く、必要に応じて専門業者への直接依頼や点検業者そのものの見直し(リプレイス)も視野に入れることで、長期的なコスト削減が可能になります。
業者選びの透明性を確保し、理事会主導で相見積もりをとる姿勢を持つことで、納得のいく判断と、質の高い塗装工事の実現が可能になります。信頼できるパートナーとともに、安全で快適な駐車場環境を守っていきましょう。
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- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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