
マンションの機械式駐車場を解体・平面化して維持費の負担をなくしたい。しかし、「総会で賛成票が集まるか不安」「特別決議のハードルが高すぎる」と悩んでいる理事会や修繕委員の方は少なくありません。
実は、2026年4月1日に施行された改正区分所有法により、この「特別決議のハードル」が大きく下がっています。過去に総会で否決されてしまった管理組合にとっても、再挑戦の大きなチャンスが生まれました。
この記事では、法改正によって総会決議のルールがどう変わったのか、管理規約の見直しが必要な理由、そして無関心層が多いマンションでも平面化を実現しやすくなる理由を解説します。
※平面化工事そのものの工法や費用については「機械式駐車場を撤去・平面化するなら知っておきたい「鋼製平面化工法」の基礎知識」で詳しく解説しています。
なぜ機械式駐車場の平面化には「特別決議」が必要なのか
機械式駐車場の解体・平面化は、マンションの「共用部分」における「形状または効用の著しい変更」に該当するのが一般的です。そのため、日常的な管理や使用細則の変更などで適用される「普通決議」ではなく、より厳格な「特別決議」が必要になります。平面化に伴う注意点やデメリットについても事前に把握しておくことが大切です。
改正前の特別決議は、「区分所有者(組合員総数)および議決権総数の各4分の3以上の賛成」が要件でした。ここで問題になるのは、車を持たない、すでに転居しているなどの理由で駐車場問題に関心がなく、総会を欠席し、委任状も議決権行使書も提出しない人の扱いです。こうした人たちは、実質的に「反対票」としてカウントされてしまいます。
たとえば100戸のマンションで特別決議を可決するには75票以上の賛成が必要ですが、20人が無反応(欠席・委任状なし)の場合、残り80人のうち75人、つまり実質94%もの賛成率が求められる計算になります。駐車場を使っていない住民にとっては「自分には関係ない」と感じやすい議題だけに、この無関心層の存在が総会の最大の壁になっていました。
改正のポイント:「全体の3/4」から「出席者の3/4」へ
2026年4月1日に施行された改正区分所有法では、この共用部分の変更に関する特別決議の要件が大きく見直されました。
最大の変更点は、賛成数の基準が「全体」から「出席者」ベースに変わったことです。具体的には、以下の2段階のルールに変更されています。
定足数として、区分所有者および議決権の各過半数が集会に出席していること(委任状・議決権行使書による参加を含む)。この定足数を満たした上で、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上の賛成で可決。
先ほどの100戸のマンションで考えてみましょう。まず定足数として51人以上の出席(委任状・議決権行使書を含む)が必要です。仮に70人が出席した場合、可決に必要な賛成票は53票です。改正前は100人中75票が必要だったことと比較すると、ハードルが大幅に下がっていることがわかります。
無関心層が多いマンションほど、法改正の恩恵が大きい
私たちがこれまで多くの管理組合をサポートしてきた経験上、平面化の議案が総会で否決されるケースの多くは、反対者が多かったからではありません。欠席し、委任状も議決権行使書も提出しなかった「無反応な住民」が多かったことに起因しています。
この法改正は、まさにそうしたマンションにとって朗報です。
改正前は、出欠の返事すら出さない住民が多いと、それだけで「全体の4分の3」の賛成票を集めることが困難になり、いくら理事会が良い計画を立てても総会で否決される原因になっていました。実際に、大手マンション管理会社のレポートによれば、平面化工事を実施した管理組合の多くは、合意形成に時間をかけながら丁寧に検討を進めた結果、実現に至っています。
改正後は、無反応な欠席者の票が「反対」として足を引っ張ることがなくなります。総会にしっかり参加して(または委任状・議決権行使書で意思を示して)くれる住民の中で、4分の3以上の賛成を得られれば計画を進めることができます。
つまり、平面化の必要性を理解し、積極的に意思表示してくれる住民の声が、より正確に反映される仕組みに変わったのです。
見落としがちな注意点:管理規約の見直し
法改正のメリットを活かすために、管理組合が見落としてはならない点があります。それは管理規約の見直しです。
多くのマンションの管理規約には、改正前の「区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上」という旧法の文言がそのまま残っています。改正区分所有法は強行規定であるため、この旧法に基づく規約の定めは2026年4月1日の施行日をもって自動的に無効となります。つまり、規約を改正しなくても法律上は出席者多数決が適用されます。
しかし、規約を改定しないまま放置すると「うちの規約には全組合員の3/4と書いてある。この決議は無効だ」と主張する組合員が出てくる可能性があり、無用の混乱やトラブルを招くリスクがあります。
法改正の恩恵を確実に活かすためには、管理規約の決議要件に関する条文を改正法の内容に合わせて更新しておくことが強く推奨されています。規約改正は「普通決議」ではなく「特別決議」ですが、改正後の新しいルール(出席者の3/4)で行うことができます。
法改正後も変わらない「合意形成プロセス」の重要性
決議のハードルが下がったとはいえ、理事会が独断で強引に話を進めてよいわけではありません。「一部の賛成者だけで勝手に決めた」という不満が生じれば、後々のマンション運営に大きなしこりを残します。
法改正後も「丁寧な合意形成プロセス」の重要性は変わりません。平面化を総会で可決するためには、以下のようなステップを踏むことが重要です。
まず、住民アンケートを実施して現在の利用状況や今後の車の保有意向、平面化後の跡地活用の希望などを把握します。客観的なデータを集めることで、感情的な議論を避けることができます。
次に、コスト比較データを作成し、「現状維持した場合の30年間のトータルコスト」と「平面化した場合のコスト」を数字で比較します。機械式駐車場の維持には年間数十万円から数百万円の保守費用がかかり、20〜25年ごとに数千万円規模の入替費用が発生します。こうした数字を見せることで、合理的な判断を促すことができます。当窓口の解体・平面化シミュレーターを使えば、概算費用をその場で確認することも可能です。
さらに、工事期間中の代替駐車場の確保や、平面化後に台数が減る場合の公平な再抽選ルールなどを事前に整理し、駐車場利用者の不安を取り除くことも欠かせません。なお、台数が減少する場合は駐車場附置義務への適合確認も必要です。
そして、総会の前に住民説明会を開催し、工法や費用の詳細を説明して住民の疑問や反対意見に丁寧に対応することが、円滑な合意形成につながります。
まとめ
2026年施行の改正区分所有法により、特別決議の要件が「出席者の4分の3」へと緩和され、機械式駐車場の平面化は実現しやすくなりました。
過去に「賛成票が集まらなかったから」と平面化を諦めてしまった管理組合にとっては、再度計画を前に進める大きなチャンスです。法改正の恩恵を最大限に活かすためにも、まずは管理規約の決議要件の見直しを行い、その上でアンケートや住民説明会を通じた丁寧な合意形成を図ることが成功への近道です。
「平面化を検討したいが、何から始めればよいかわからない」「過去に否決された議案をもう一度進めたい」という方は、中立的な立場からアドバイスを行っている当窓口までお気軽にご相談ください。費用の比較資料や住民説明会用の資料の作成もサポートしております。











