
都市部のマンションでは、敷地を有効活用する手段として機械式駐車場が普及してきました。
しかし最近では、車離れや車両の大型化により利用率が低下し、空きが目立つようになっています。
維持費もかさむことから、平面駐車場への改修を検討するマンションが増えています。
この記事では、機械式駐車場の解体と平面化の方法、それぞれの特徴と工法の選び方について学んでいきます。今後の駐車場戦略に役立つ内容です。
機械式駐車場の平面化とは?
老朽化した機械式駐車場を解体・平らに整備することで、メンテナンスの手間やコスト削減につながります。
また、大型車の駐車も可能になり、故障や待ち時間、段差の悩みも解消。
用途の自由度が上がり、防災倉庫や自転車置き場への転用も可能です。
駐車場附置義務について
ただし、平面化により収容台数が減る点や、自治体の駐車場附置義務(※一定の敷地面積や住戸数に応じて必要な駐車台数を確保しなければならない制度)も踏まえた判断が必要です。附置義務の内容は地域によって異なるため、工事前に行政への確認が欠かせません。
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平面化前に確認したい「機械式駐車場のタイプ」
タイプ | 特徴 | 平面化への影響 |
---|---|---|
地上式(二段式など) | 地面上にパレットがある構造 | 撤去後の段差が微小のため、施工が簡易で済むケースが多い |
地下ピット式 | 地下にパレット収納がある構造 | 空洞部処理が必要で、工法選択に慎重さが求められる |
解体と平面化の概要
解体方法は次の通りです:
- 屋外型:重機によるパレット・フレーム切断撤去
- 屋内型:狭小スペースの場合は手作業が多くなるためコスト増
撤去後は、以下の平面化工法が検討されます:
- 埋め戻し工法(既存機械式駐車場撤去。ピットに砕石等を投入後、舗装)
- 鋼製平面化工法(既存機械式駐車場撤去。ピットに柱や梁を立て、鋼製床板を設置)
- 平面化ロック工法(固定化)(既存機械式駐車場残す。パレットが落下しないように固定)
<地下ピット式>
機械式駐車場平面化の様々な工法
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各平面化工法の特徴と比較
項目 | 埋め戻し工法 | 鋼製平面化工法 | 平面化ロック工法 (固定化) |
---|---|---|---|
費用 | ◎ 比較的安価 | △ 高め(鋼材+専門施工) | ◎ 非常に安価 |
工期 | ◎ 長い(コンクリート仕上げは特に長い) | ○ 比較的短い(養生不要) | ◎ 最短2〜3日で対応可能 |
地盤への影響 | △ 重さや沈下リスクあり | ◎ 軽量・地盤負荷少ない | ◎ 既存構造そのまま、影響限定的 |
機械式駐車場再設置 | × 埋め戻すと再設置困難 | ○ 将来の再設置が可能 | ○ 将来の再設置が可能 |
メンテナンス性 | ◎ 舗装補修程度でOK | △ 鋼材塗装・防錆処理・排水設備維持が必要 | 暫定的措置 |
適した目的 | 屋外かつ、地盤の良い場所。コスト重視 | 屋内。設置場所を選ばない | とりあえず安全確保したい |
埋め戻し工法の詳細
地下ピットに砕石や土砂を詰めて舗装する方法です。
メリット
- 施工コストが安く、工期も短い
注意点
- 砕石重量が設計荷重を超える場合、ピット破損や沈下障害が発生する恐れあり
- 建物構造によっては施工不可(ピットスラブが薄い場合など)
- 空洞や沈下、排水不良が起きる可能性もあるため、施工精度が重要

屋外で広い場所なら埋め戻しがおすすめです。ただし、砕石の重さによる地盤沈下リスクの確認は必須。
鋼製平面化工法の詳細
地下ピットの空洞に軽量鉄骨+鋼製床板で平面を構築する方法です。
メリット
- 軽量構造で地盤負荷が少なく、沈下リスクが低い
- 将来的な機械式駐車場の再設置が可能
注意点
- 鋼材価格・施工費用が高くなる
- 排水設備の維持・点検が継続的に必要
- 耐荷重設計が2.5〜3トン程度。

施工場所を選ばず、将来機械式駐車場の再設置の可能性があるなら鋼製平面化!
平面化ロック工法(固定化)の詳細
機械式駐車場の動作を止めパレットや支柱を固定する方法です。
メリット
- 解体工事がないため、1列あたり約40万円程度と低コスト
- 解体作業が少なく、最短で2〜3日間で施工完了
- 安全面は、パレット固定により確保され、事故リスクが減少
注意点
- あくまで中期対応策:将来的な全面改修・平面化に備える必要あり
- 地上段のみ使用可となり、収容台数は制限(他の平面化工法と同様)
- 高さや車種制限を完全に解消しない場合もある
- 専門業者選定が重要で、業者によって仕上がり品質に差が出る

“とりあえず低コストで安全に”が目的ならこれ。ただし、将来的に本格的な平面化も視野にいれておこう。
まとめ
機械式駐車場の解体・平面化は、老朽化や維持コストの増加、利用率の低下といった課題を抱えるマンションにとって、有効な選択肢です。
主な工法には「埋め戻し」「鋼製平面化」「平面化ロック工法(固定化)」があり、それぞれコスト・工期・安全性・将来の再利用性に違いがあります。
また、平面化によって収容台数が減る場合は、自治体が定める駐車場附置義務への対応も忘れてはなりません。
工法ごとの特徴と自マンションの状況を照らし合わせ、住民の合意形成を図りながら、専門家の助言を得て慎重に検討を進めることが大切です。
平面化は、駐車場の再活用やマンション全体の価値向上にもつながる可能性があります。
投稿者プロフィール

- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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