機械式駐車場の平面化工法のひとつである「埋め戻し工法」は、費用を抑えやすく、完成後の維持管理もほぼ不要になるため、多くのマンションで採用されています。
一方で、埋め戻し工法には管理組合が事前に把握しておくべきリスクがいくつかあります。「土で埋めて平らにするだけ」というイメージで安易に選ぶと、後から問題が顕在化するケースもあります。
この記事では、埋め戻し工法を検討する際に見落としやすい3つのリスクと、工法選択の考え方を解説します。
リスク1:廃棄物処理法上の問題
埋め戻し工法では、機械式駐車場の装置を撤去した後、地下ピット(コンクリート製の構造体)をそのまま残して砕石で埋め戻すのが一般的です。ピットのコンクリート躯体を解体・撤去する方法もありますが、費用が大幅に増加するため現実的にはほとんど採用されません。
ここで注意すべきなのが、ピットのコンクリート躯体を残したまま砕石で埋めてしまうことが、廃棄物処理法上どのように扱われるかという問題です。装置が撤去されて本来の役割を失ったコンクリート構造物を、解体・撤去せずにそのまま土砂で覆うことが「産業廃棄物の不法投棄」に該当するリスクが指摘されています。
現時点では罰則を受けた公表事例は確認されておらず、法的な解釈が定まっていない部分もあります。しかし、管理組合として「法的にグレーな状態のまま工事を進めてよいのか」は、事前に認識しておくべき問題です。
埋め戻し工法で施工する業者の中には、この問題に触れずに工事を進めるケースもあります。「みんなやっているから大丈夫」という説明を受けた場合でも、管理組合としてリスクを認識した上で判断してください。
リスク2:砕石の重量による荷重増加
埋め戻し工法では、地下ピットに大量の砕石を投入します。砕石は想像以上に重く、ピットの深さや面積によっては、元の機械式駐車場があった時よりも大きな重量が基礎や地盤にかかることになります。
埋め戻し後の重量がどの程度増加するかは、ピットの深さと面積で決まります。「機械式駐車場の相談窓口」では、ピットの規模を入力するだけで重量の増加分を確認できる埋め戻し重量計算シミュレーターを公開しています。埋め戻しを検討している場合は、事前に確認してください。
ただし、重量が増加すること自体が直ちに危険というわけではありません。転圧(締固め)と排水対策が適切に行われていれば、大規模な沈下が発生する可能性は高くありません。上部のアスファルトが一部陥没する程度のことはありえますが、部分的な補修で対応可能なレベルです。
リスク3:排水機能の喪失
地下ピットが結果的に雨水の一時貯留の役割を果たしている場合があります。ピットを砕石で埋めてしまうと、この貯留機能がなくなり、大雨時に周辺への排水量が増加する可能性があります。
また、埋め戻し後にピット内に水が溜まらないよう、施工前にピットの底板や側壁に水抜き穴(コア抜き)を開けて排水経路を確保する処理が必要です。この処理が不十分だと、地下水の浮力でピット構造体が浮き上がったり、砕石が流出して路面が沈下したりするリスクがあります。
埋め戻しが適さない場合の選択肢
埋め戻し工法は屋外ピットにのみ適用できます。屋内ピットの場合は、土圧や荷重が建物構造体に影響を及ぼすリスクがあるため、鋼製平面化工法やEPS工法を検討してください。
屋外ピットであっても、上記のリスクが気になる場合は、鋼製平面化工法が有力な選択肢です。鋼製平面化工法はピットを埋めずに鋼材で床を新設するため、重量増加が小さく、廃棄物処理法上のリスクも回避できます。ただし、鉄部の再塗装や排水ポンプの維持管理が必要になる点は理解した上で比較してください。
どの工法が自分のマンションに合うかの判断には、ガイドブック『平面化工法の選び方』の4工法比較表と判断フローチャートが参考になります。
よくある質問
Q. 埋め戻し工法は避けたほうがよいですか
いいえ、一概に避けるべきとは言えません。埋め戻し工法は費用面で優位性があり、完成後の維持管理もほぼ不要です。屋外ピットで、廃棄物処理法上のリスクを理解した上で選択するのであれば、合理的な工法です。リスクを知らずに「安いから」だけで選ぶのが問題です。
Q. 「不法投棄になる」と言われましたが本当ですか
法的な解釈が定まっていないのが現状です。罰則を受けた公表事例は確認されていませんが、リスクがゼロとも言い切れません。一方で、鋼製平面化を推奨する業者がこの問題を強調して営業に利用するケースもあるため、中立的な視点で判断してください。
Q. 重量シミュレーターはどこで使えますか
「機械式駐車場の相談窓口」のサイト内で無料で利用できます。ピットの深さと面積を入力するだけで、埋め戻し後の重量増加分を確認できます。
Q. 埋め戻しと鋼製平面化、どちらがよいですか
駐車場の設置環境(屋外か屋内か)、将来の再設置の可能性、予算、リスク許容度によって異なります。屋外で費用を抑えたい場合は埋め戻し、屋内や将来の再設置を残したい場合は鋼製平面化が候補になります。4工法の比較については「機械式駐車場の解体と平面化の基本知識」で解説しています。
埋め戻し工法の3つのリスクを理解する
廃棄物処理法上の問題(ピット躯体を残したまま埋めることの法的リスク)、砕石の重量による荷重増加、排水機能の喪失(水抜き処理の品質)──これらを理解した上で他の工法と比較し、「リスクを知った上で選ぶ」ことが重要です。
まとめ
埋め戻し工法は、費用を抑えやすく完成後の維持管理もほぼ不要になる工法ですが、以下の3つのリスクを事前に把握しておく必要があります。
- 廃棄物処理法上の問題(ピット躯体を残したまま埋めることの法的リスク)
- 砕石の重量による荷重増加(シミュレーターで事前に確認可能)
- 排水機能の喪失(水抜き処理の品質が施工の成否を左右)
これらのリスクを理解した上で、他の工法と比較して判断してください。「安いから」「わかりやすいから」だけで選ぶのではなく、自分のマンションの条件に合った工法を選ぶことが重要です。









