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機械式駐車場の駐車場使用料を管理費に使うリスク|修繕積立金に積み立てるべき理由と区分経理

「うちのマンションは管理費が安くて助かる」と感じているなら、少し確認が必要です。その安さは、本来将来のために積み立てるべき駐車場使用料を、日々の管理費に充当して実現している可能性があるからです。

この記事では、機械式駐車場の駐車場使用料の会計処理に潜むリスクと、国土交通省が推奨する「区分経理」の考え方、段階的な見直しの手順を解説します。

駐車場使用料の使い道が将来の資金計画を左右する

管理組合の会計は、大きく2つに分かれています。

管理費会計は、光熱費、清掃費、管理会社への委託費など、毎月かかる経費に使うお金です。修繕積立金会計は、大規模修繕工事や給排水管の更新、機械式駐車場の装置入替(更新)など、将来の大きな工事に備えて積み立てておくお金です。

機械式駐車場を持つマンションでは、駐車場使用料をどちらの会計に入れるかで、将来の資金計画が大きく異なります。

駐車場使用料を管理費に使い切るリスク

機械式駐車場のモーターの交換などは多額の費用が必要となる
モーターの交換などは多額の費用が必要となる

多くのマンションでは、駐車場使用料を管理費会計に入れ、そこから保守点検費を支払っています。保守点検費を管理費から出すこと自体に問題はありません。

問題なのは、保守点検費を差し引いた残りの利益まで、日常の管理費(管理会社への支払いや清掃費など)に使ってしまっているケースです。この状態には2つの構造的なリスクがあります。

将来の入替費用が不足する

機械式駐車場は、20〜25年で装置の入替(更新)が必要になります。費用は1パレットあたり150〜250万円程度で、全体では数千万円規模の工事になります。駐車場の利益を日々の管理費で使い切ってしまうと、入替の時期に資金が不足します。

管理費会計の赤字体質が見えなくなる

駐車場使用料で管理費の不足分を補填していると、管理費会計自体が赤字体質であることに気づけない場合があります。空き区画が増えて駐車場収入が減少した際に、マンション全体の会計が急速に悪化するリスクがあります。

国土交通省が推奨する「区分経理」

国土交通省の「マンション標準管理規約」のコメント(第29条関係)では、機械式駐車場の使用料について以下の方針が示されています。

駐車場使用料は、その管理に要する費用(保守点検費など)に充てた残額を、修繕積立金として積み立てることが望ましい。

つまり、駐車場使用料から保守点検費を差し引いた利益は、管理費ではなく修繕積立金に回すべきという考え方です。

この方針を実現するために、管理費会計・修繕積立金会計とは別に、駐車場だけの収支を管理する「駐車場特別会計(区分経理)」を設けるのが理想的です。区分経理によって駐車場単体の収支が明確になり、使用料の妥当性や将来の資金計画を正確に判断できるようになります。

区分経理の導入が難しい理由と対策

「駐車場の利益を修繕積立金に移そう」と考えても、実行にはハードルがあります。これまで駐車場使用料の利益で管理費の不足を補填していた場合、利益を修繕積立金に移すと管理費会計が赤字になるからです。

この状態を解消するには、以下のいずれかの対応が必要です。

  • 管理費を値上げして、駐車場使用料に依存しない水準にする
  • 管理サービスの仕様を見直して(清掃頻度の変更など)、支出を削減する

また、管理会社の会計システムが駐車場の区分経理に対応していないケースもあります。その場合はシステムの変更や運用の調整が必要になるため、管理会社との事前の協議が欠かせません。

どちらも住民や管理会社との合意形成が必要なため、先送りされるケースが少なくありません。しかし、先送りするほど将来の修繕積立金の不足は拡大します。

区分経理のメリット

外部貸し出し時の税務上のメリット

空き区画を外部に貸し出す場合、管理組合の収益事業として法人税の課税対象になります。区分経理で駐車場の収支を明確にしておけば、保守点検費や装置の減価償却費を正確に経費として計上でき、税負担を適正に抑えられます。区分経理をしていないと経費の算出が複雑になり、税務上の不利益につながる可能性があります。

使用料の適正化と平面化の判断材料になる

区分経理によって駐車場単体の収支が見えるようになると、現在の使用料が妥当なのか、安すぎるのかが判断できます。「このままでは将来の入替費用が足りない」という事実が数字として見えれば、使用料の値上げや、維持費のかからない平面駐車場への転換を検討するための客観的な根拠になります。

段階的な見直しの手順

いきなり全額を移行するのが難しい場合は、段階的に見直してください。

ステップ1:収支の見える化

まずは会計を分けなくてもよいので、計算上で「駐車場使用料の収入」と「駐車場の維持費(保守点検費・部品交換費など)」を出し、現状の駐車場の実質的な利益額を把握します。

ステップ2:利益の一部を修繕積立金に振り替える

駐車場使用料の利益のうち、管理費の補填に必要な最低限の分以外を、修繕積立金会計へ振り替えるルールを設けます。

ステップ3:管理費を適正水準に見直す

時間をかけて管理費を適正な水準(駐車場使用料に依存しない金額)まで見直し、最終的に駐車場の利益全額を修繕積立金に回せる状態にします。

よくある質問

Q. 駐車場使用料は管理費に入れてはいけないのですか

いいえ、管理費に入れること自体が問題ではありません。問題なのは、保守点検費を差し引いた利益まで日常の経費に使い切ってしまうことです。利益部分は将来の入替に備えて修繕積立金に積み立てることが推奨されています。

Q. 区分経理は義務ですか

法的な義務ではありません。ただし、国土交通省の「マンション標準管理規約」のコメントでは、駐車場使用料の利益を修繕積立金に積み立てることが望ましいとされています。区分経理はそれを実現するための手段です。

Q. 駐車場使用料の利益が出ていない場合はどうすればよいですか

駐車場使用料が保守点検費をまかなえず赤字になっている場合は、使用料の値上げ、空き区画の外部貸し出し、または保守点検契約の見直し(独立系への切り替え等)を検討してください。赤字が続く場合は、維持費のかからない平面化も選択肢になります。

Q. 区分経理を導入するには総会決議が必要ですか

会計の区分方法の変更は管理規約の変更を伴う場合があり、その場合は総会での特別決議が必要です。また、管理会社の会計システムが区分経理に対応しているかも事前に確認してください。対応していない場合はシステムの変更や運用の調整が必要になります。まずは管理会社に相談し、現在の規約とシステムの両面から実現可能性を整理した上で、理事会で方針を検討してください。

まとめ

機械式駐車場の駐車場使用料は、余剰資金ではありません。将来の装置入替に備えるために駐車場自身が生み出している対価です。

この利益を日々の管理費で使い切ってしまうと、入替の時期に数千万円の資金不足に陥るリスクがあります。

すぐに会計を分けることが難しくても、まずは「今の管理費の安さは、将来の修繕費を取り崩して成り立っている可能性がある」という現状を理事会で共有することから始めてください。

参考資料:マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省) ※第29条関係のコメントにおいて、機械式駐車場使用料は「修繕積立金として積み立てることが望ましい」と記述されています。

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