
マンションに設置されている機械式駐車場は、敷地を有効活用できる便利な設備ですが、いざ契約や区画変更となると
「地下の段って大丈夫?」「地上段の方がやっぱり便利?」など、段の選び方に悩む方も多いのではないでしょうか?
とくに地下ピット式では湿気や浸水の不安もあり、価格だけで判断するのは危険です。
この記事では、もっとも一般的な単純昇降式(上下に動くタイプ)で、地上1段・地下2段からなる3段構成の機械式駐車場を対象に、それぞれの段の特徴や使い勝手、地下段の注意点などをわかりやすく解説していきます。
機械式駐車場の「段」とは?
多くの立体機械式駐車場では、車を昇降装置によって上下に収納する仕組みが採用されており、「地上段」「地下1段目」「地下2段目」といった階層に分かれています。希望する段によって、日々の使い勝手や費用面で大きな違いが生まれます。
各段の特徴と使い勝手
段の位置 | 特徴 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
地上段 | 地表と同じ高さで、すぐに出し入れ可能 | 操作なしで乗り降りができ、日常的に使いやすい | 使用料が高めに設定されることが多い |
地下1段目 | 一度昇降装置を操作して出庫 | 利便性とコストのバランスが良い段 | 時間帯によっては待ち時間が発生する場合あり |
地下2段目 | 最も深い層に位置し、出庫に時間がかかる | 長期保管や週末利用に適し、コストを抑えやすい | 湿気やほこりが溜まりやすく、車体の汚れやカビ臭が気になることも。通気性の悪さから結露が生じやすく、特に長期保管時は車内の換気や除湿対策が求められます。また、出庫に時間がかかるため、日常利用には不向きなこともある |
機械式駐車場(地下ピット式)の地下はおすすめ?


段選びで悩むポイントのひとつが、「地下は本当に快適に使えるのか?」という疑問です。特に地下ピット式の機械式駐車場は、地上の限られた敷地を有効活用できる反面、特有の注意点もあります。
たとえば、地下は湿気がこもりやすく、ほこりが溜まりやすいという環境的な特徴があります。
特に地下2段目などの深い層では、通気性の悪さから結露やカビ臭が発生しやすく、長期保管時には車内の除湿や換気が必要になることも。また、地下ピット内の排水状況にも注意が必要です。
地下段のデメリットを再確認しておこう
地下段、とくに地下2段目は月額使用料が安く設定されていることが多いため、一見お得に見えます。しかし実際には、利用上の制約やメンテナンス環境において、いくつか注意すべきデメリットがあります。
デメリット | 内容 |
---|---|
湿気・結露 | 地下は通気性が悪く、湿気がこもりやすいため、車内にカビ臭が出たり、金属パーツがサビやすくなることがあります。 |
汚れやすさ | 地下にはほこりが溜まりやすく、車体が汚れる頻度が高くなる傾向があります。とくに長期保管中の汚れや虫の発生に注意が必要です。 |
出庫時間の長さ | 特に地下2段目は、装置が2回昇降する必要があるため、朝の出勤ラッシュなどでは待ち時間が長くなることも。 |
災害リスク | 大雨やゲリラ豪雨時の浸水リスクがあり、万一ポンプが故障した場合には車両が水没する恐れもあります。地域のハザードマップ確認は必須です。 |
車種の制限 | 地下段は構造上の制限が厳しく、大型SUVやハイルーフ車は収まらない場合があります。購入予定の車がある場合は特に要注意です。 |

地下段のコストメリットに目を奪われがちですが、維持管理の手間や将来的な災害リスクも含めて、総合的に判断するのが後悔しないコツです。
排水ポンプの限界と豪雨リスク


通常、地下ピットには排水ポンプが設置されており、雨水や洗車時の水を自動で排出する仕組みになっています。
しかし、排水ポンプが正常に作動していても、近年増加している局所的な豪雨(ゲリラ豪雨など)では排水能力を超えてしまい、浸水のリスクが高まるケースがあります。
実際に、短時間で大量の雨が降ったことで排水が追いつかず、ピット内が冠水し、車両が水没した事例も報告されています。
このような被害を防ぐためには、排水ポンプの定期的な点検・清掃や非常用電源の整備状況を確認することが大切です。
さらに見落としがちなのが、地域ごとの地形や水害リスクです。
たとえば、低地や海抜ゼロメートル地帯、川の近くなどは地下浸水リスクが高く、仮に排水設備が整っていても浸水の危険性が上がります。
お住まいの地域のハザードマップを確認し、過去の浸水実績や地形の特性を事前に把握しておくことが、安全な段選びにつながります。
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利用スタイル別:おすすめの段はこれ!
実際に利用している住民の傾向を見ると、ライフスタイルに合わせて段を選んでいることがわかります。
- 毎日車を使う方:出し入れがスムーズな地上段がおすすめ。
- 利便性と費用のバランスを重視する方:地下1段目が人気です。
- 週末のドライブや長期保管が中心の方:コストを抑えられる地下2段目が向いています。
段ごとの月額使用料(参考)
分譲マンションにおける機械式駐車場の使用料は、管理規約や駐車場使用細則に定められていることが一般的です。
そのため、導入されている駐車装置の形式や段の利便性によって、使用料に差がある場合があります。
以下は一例としての目安であり、実際の料金はお住まいのマンションの管理規約をご確認ください。
段の位置 | 月額使用料(目安) |
---|---|
地上段 | 高め(20,000円〜) |
地下1段目 | 中程度(15,000円〜) |
地下2段目 | 低め(10,000円〜) |
管理組合が定期的に見直しを行っているケースもありますので、契約時や変更時には、最新の使用細則の確認をおすすめします。
忘れずに確認したい車両制限~段ごとに異なる可能性も~
機械式駐車場には、車高・車幅・車重の制限が定められており、段によって制限が異なる場合もあります。
たとえば、地下2段目では構造上の理由から車高の上限が低く設定されていることがあるなど、注意が必要です。
項目 | 一般的な制限値(目安) |
---|---|
車高 | 1,550mm〜2,050mm |
車幅 | おおよそ1,850mm |
車重 | 約2,000kg |
これらの制限値は、管理規約や使用細則に記載されているのが通常です。契約前には、必ず該当書類を確認し、不明点があればマンション管理会社や理事会に相談しましょう。
まとめ
機械式駐車場の段選びは、日々の暮らしの快適さに直結します。毎日使うなら地上段、コスト重視なら地下2段目、バランス派は地下1段目といったように、ライフスタイルに合った段を選ぶことが満足度の高い駐車場選びにつながります。
とくに地下ピット式の駐車場では、湿気・ほこり・排水ポンプの管理状況、地域の地形特性などを十分に考慮することが大切です。
月額使用料や車両制限は、ほとんどのマンションで管理規約や使用細則に基づいて定められているため、契約前には必ず確認を。
また、段ごとに制限内容や環境リスクが異なる可能性もあるため、安心・安全に利用するためにも、事前のチェックをしっかり行いましょう。
投稿者プロフィール

- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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