
古くなって使われなくなった機械式駐車場、増える空き区画、かさむ修繕費用──
こうした悩みを抱えるマンションでは、機械式駐車場を撤去し、操作不要で使いやすい「平面駐車場」に転換する手法が注目されています。
「平置き化」「平面駐車場化」「平面転換」「フラット化」など、さまざまな呼び方がありますが、基本的な意味は共通しています。
機械式駐車場の平面化とは?
平面化とは、機械で車を上下に動かす機械式駐車場の機構を撤去または停止し、地面と同じ高さで駐車できる状態に再整備することです。
機械の操作が不要となり、維持管理コストが削減されるほか、空き区画の有効活用にもつながります。
地下ピット式の機械式駐車場の平面化工法には「埋め戻し」「鋼製平面化」「固定化」などがあり、駐車場の構造や将来の使い方によって選択肢が異なります。
駐車場の構造と平面化の前提
機械式駐車場には、大きく以下の2つの構造があります:
- 地下ピット式:地下にくぼんだスペース(ピット)がある構造。
- 地上式:地上のみで構成され、地下空間のない構造。
平面化工事は、地下に空間があるかどうかで内容が大きく変わります。
地下ピット式では、空間の埋め戻しや塞ぎ方が設計上の大きなポイントとなり、工法の選択肢も多岐にわたります。
地上式の場合は大規模な埋め戻しが不要なため、施工が簡易で済む場合がありますが、段差調整や排水などの処理が必要なケースもあります。


地下ピット式の平面化にはどんな方法があるの?

地下ピット式における平面化の代表的な工法は以下の3つです
工法 | 内容 | メリット |
---|---|---|
埋め戻し工法 | ピットを砕石や砂で埋めて舗装 | 費用を抑えやすく施工業者が多い |
鋼製平面化工法 | 鉄骨と鋼板で床をつくり、ピットを封じる | 施工場所を選ばない・工期短め |
平面化ロック (固定化工法) | 既存パレットを停止・固定し平置き仕様に | 工期が短く、費用も抑えられる |
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機械式駐車場の平面化ロック工法は既存設備を活用し低コストで短工期実現可能な新選択肢。構造に合わせたオーダーメイド施工で車高制限も緩和できるが恒久的な措置ではない点に注意が必要です。
平面化後の再利用実態
「マンションみらい価値研究所 Report 28(2021年)」によれば、平面化後の使い方には以下の傾向があります:
- 平置き駐車場として継続使用:約95%
- 駐輪場、防災備蓄庫、緊急車両待機スペースなどへ転用:約5%
ほとんどのマンションで、撤去後も引き続き駐車場として使用されていますが、工夫次第で他の用途に転換することも可能です。
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マンション機械式駐車場の平面化が急増中。15%が既に実施、高額修繕費や空き区画増加が主因。選択肢として一般的に。
費用・工期・再設置可否の比較(地下ピット式)
工法 | 初期費用 | 工期目安 | 機械式駐車場の 再設置可否 |
---|---|---|---|
埋め戻し工法 | 低〜中 | 約1~2か月 | 不可 |
鋼製平面化工法 | 中〜高 | 約2~4週間 | 可能 |
固定化工法 | 低 | 約1週間 | 可能 |
※上記の内容は目安であり、駐車場の区画数、立地条件、周辺環境などによって大きく変動します。

どの工法を選ぶかは“将来どう使いたいか”も大事な判断軸になります。
たとえば将来また機械式駐車場に戻す可能性があるなら鋼製平面化工法が向いていますし、少しでも費用を抑えたいなら固定化も現実的な選択肢です。
<地下ピット式>
機械式駐車場平面化の様々な工法
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まとめ
機械式駐車場の平面化は、設備の老朽化や空き区画の増加に対応するための、構造的な改修手段のひとつです。
特に地下ピット式では、「埋め戻し工法」「鋼製平面化工法」「固定化工法」といった複数の工法があり、それぞれ施工期間・費用・維持管理の内容が異なります。
埋め戻し工法は比較的シンプルで費用を抑えやすい一方、将来的な機械式駐車場の再設置には制約があります。
鋼製平面化工法は機械式駐車場の再設置が可能ですが、防錆塗装や排水設備の維持といった定期管理が必要です。
固定化工法は安価で短期間での工事が可能ですが、あくまで一時的な対処法と考えるべきです。
こうした工法の選定にあたっては、現地の条件、地盤の状況、管理組合の要望などを踏まえ、事前調査と設計検討を丁寧に行うことが重要です。
専門家のサポートを受けながら、理事会や住民の皆さんでじっくり検討していきましょう。
投稿者プロフィール

- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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