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機械式駐車場の駐車「車幅」ギリギリは危険? カタログ値と実寸法の落とし穴

機械式駐車場の駐車「車幅」ギリギリは危険? カタログ値と実寸法の落とし穴

のカタログを見て「全幅1845mmだから、制限1850mmのパレットに入る!」と判断するのは正しいでしょうか? 結論から言えば、数値が制限内であれば、基本的には入庫可能です。

ただし、機械式駐車場のサイズ制限は非常に厳格に作られています。「入るか・入らないか」だけでなく、毎日の利用における「使い勝手」まで考慮すると、知っておくべきポイントがいくつかあります。 今回は、カタログ値と実寸法の関係、そして制限値ギリギリで利用する際の注意点について解説します。

「入る」と「停めていい」の基準

まず、機械式駐車場の利用可否を決める基準について整理しましょう。

契約の絶対基準は「車検証」

マンションの管理規約や使用細則では、メーカーの設計値に基づいた数値が定められています。 たとえ実測でギリギリ入ったとしても、車検証の数値が規定(例:1850mm)を1mmでも超えていれば、契約はできません。これは万が一の事故や故障の際、安全基準を満たしていない車両を収容していたとなると、保険適用外や免責の問題に発展するためです。

注意が必要な「タイヤ外幅」

機械式駐車場の駐車で注意が必要な「タイヤ外幅」

基本的に車検証の「全幅」が制限内であれば入庫可能ですが、車種(特にスポーツカーや輸入車)によっては注意が必要なケースがあります。それが「タイヤ外幅」です。

パレットの構造とタイヤの関係

機械式駐車場のパレットには、タイヤを誘導するための溝やガイドレールが設置されていることが多く、このレールの幅は制限値に合わせて設計されています。 車のボディ(全幅)は制限内でも、タイヤがフェンダーギリギリまで外側に出ている車の場合、このレールの幅にタイヤが収まりにくいケースがあります。

カタログ値との違い

カタログの「全幅」はボディの最大幅を指しますが、タイヤの外側の幅は記載されていません。

  • タイヤのたわみ:
    接地部分は重さで少し広がります。
  • ホイール交換:
    純正以外の場合、外側に出るサイズを選定していると干渉の可能性があります。

制限内であっても、タイヤ幅が広い車の場合は、事前にパレットの溝幅との相性を確認しておくと安心です。

制限値ギリギリで運用する場合の「使い勝手」

制限値ギリギリ(例:制限1850mmに対し、車幅1845mmなど)であっても、メーカーの仕様上は問題なく利用できます。 ただ、余裕がある場合と比較して、日常の操作で少し気を使う場面が出てきます。

1. 入庫時の慎重な操作

左右のクリアランス(隙間)が少ないため、パレットの中心に対して真っ直ぐに入庫する丁寧な操作が求められます。 斜めに進入したり、ハンドル操作が遅れたりすると、タイヤ側面がガイドレールに接触しやすくなります。慣れるまでは慎重な運転が必要です。

2. センサーの感度

機械式駐車場の安全センサーは、車両のはみ出しを厳格に検知します。 制限値ギリギリのサイズの場合、強風で車が揺れたり、雨粒の反射などの影響で、稀にセンサーが「はみ出し」と判定して装置が停止することがあります。

3. 乗り降りの動線

入庫自体は問題なくても、運転席の位置に装置の柱やチェーンが重なることがあります。 車幅に余裕がない場合、ドアを開けられる角度が制限されるため、荷物の出し入れや乗り降りの際に、少し窮屈さを感じることがあるかもしれません。

快適な「余裕」の目安

「入庫可能」なだけでなく、「快適に」利用するためには、どれくらいの余裕があると良いのでしょうか。あくまで目安ですが、運転のしやすさを重視するなら以下の数値を参考にしてください。

  • 快適レベル:
    左右合計で10cm程度(片側5cmずつ)の余裕
  • 注意レベル:
    左右合計で5cm未満(片側2.5cm未満)の余裕

合計5cm未満の場合、物理的には入りますが、毎回の入庫操作にはある程度の集中力が必要です。「毎日サッと停めたい」という方は、少し余裕を持ったサイズ選びをするか、契約前に操作感を試してみることをお勧めします。

解決策:実車での「試し入れ」が確実

数値上の計算で迷う場合は、「買う前に実車を入れてみる」のが最も確実な解決策です。

ディーラーにお願いして試乗車で「試し入れ(試庫)」を行えば、

  • タイヤとレールの収まり具合
  • 入庫時の運転のしやすさ
  • ドアを開けた時の降りやすさ

これらを実際に体感できます。「スペック上はOKだが、思ったより降りるのが大変だった」といったミスマッチを防ぐことができます。

まとめ

機械式駐車場のサイズ制限は、基本的にメーカーが定めた範囲内であれば利用可能です。

  1. 契約可否は「車検証」の数値で決まる。
  2. 物理的には「タイヤ外幅」と「レールの収まり」を確認。
  3. 制限値ギリギリの場合は、丁寧な操作が必要になることを理解しておく。

「入るか入らないか」だけでなく、「毎日スムーズに使えるか」という視点を持つことが、後悔のない車選びにつながります。

記事の編集者


編集部

マンション管理の適正化を目指す一般社団法人。「機械式駐車場の相談窓口」を運営し、中立的な立場から管理組合をサポートしています。
記事は、専門的な知見に基づく事実確認を徹底し、正確かつ公正な情報を発信できるよう編集部全体で制作しています。

記事の編集者


山田 俊介

機械式駐車場の構造や仕様を知り尽くした技術スペシャリスト。 専門性が高く不透明になりがちなメンテナンス費用や修繕見積もりを、プロの目で厳しくチェックします。「本当に必要な工事か」「価格は適正か」を機械的な根拠に基づいて判断し、管理組合様の利益を守ります。

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Hidekazu Ishikawa
佐藤 由香里

機械式駐車場の解体・平面化を専門とする企業での役員経験を持つ。 専門的な施工知識をベースにしつつ、理事会や住民の皆様が抱く「不安」を「安心」に変える丁寧な対話を大切にしています。女性ならではの柔らかい物腰と生活者の視点で、工事完了まで親身に伴走します。

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Hidekazu Ishikawa
永井 和也

マンション管理士

機械式駐車場の解体・平面化専門企業の元執行役員。
「工事の技術的判断(ハード)」と「管理組合の合意形成・規約改正(ソフト)」の両面に精通したスペシャリストです。複雑な利害関係を整理し、理事会が迷わずに進めるための「全体最適」な解決策を提示します。


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