投稿日:

平面化はもう当たり前?大手マンション管理会社のレポートが語るマンション駐車場の今

平面化はもう当たり前?大手マンション管理会社のレポートが語るマンション駐車場の今

かつては「都市型マンションの象徴」とも言えた機械式駐車場。でも最近では、使われないまま空いている区画や、メンテナンス費用の負担に悩む管理組合が増えてきました。そんな中で注目されているのが「平面化工事」。実はこの動き、もう一部の特別なマンションだけの話ではありません
この記事では、大和ライフネクスト株式会社がまとめたレポート「マンションみらい価値研究所 Report 28(2021年7月)」をもとに、機械式駐車場の平面化が“当たり前の選択肢”になりつつある現状をわかりやすくご紹介していきます。

平面化工事は、もはや“特別な対応”ではない

大和ライフネクストの調査によると、全国で同社が管理する3,994件のマンションのうち、約半数にあたる2,039件が機械式駐車場を導入しており、そのうち約15%(298件)で平面化工事が実施済みです。

区分件数割合
管理マンション総数3,994件100%
機械式駐車場あり2,039件51.0%
平面化実施済298件7.5%(全体)
14.6%(機械式駐車場付き)

2021年のデータではありますが、この数からもわかるように、機械式駐車場の平面化はすでに「よくある工事」になりつつあるのです。そして現在では、さらに多くのマンションがこの判断に至っていることが予想されます。

なぜ、平面化が進んでいるのか?

機械式駐車場の平面化を決めた管理組合が挙げた理由で最も多かったのは、

  • 将来的に高額な修繕・維持費がかかるため(97.6%)
  • 駐車場の利用者が少なく、駐車場が必要ないため(93.6%)

というものでした。

加えて、住民アンケートなどでは以下のような声も寄せられています。

  • 車のサイズが合わず使えない
  • 過去に冠水事故があり、不安を感じる
  • メーカーが部品供給を終了しており、今後が不安

つまり、「使われないのにお金はかかる」「安全面でも安心できない」といった理由から、撤去や平面化を検討する組合が増えているというわけです。

平面化の方法はいくつかある

機械式駐車場の平面化には、マンションの構造や敷地条件に応じていくつかの方法があります。

工法内容特徴(メリット・デメリット)
鋼板平面化ピット内に支柱と鋼板の床を設置工期が短く、将来再設置も可能
埋め戻し工法ピットに砕石を入れて整地、アスファルト舗装比較的安価で簡便/再設置は不可/沈下リスクあり
コンクリートスラブ工法型枠を組んでコンクリートを打設強度が高い/工期が長く、ひび割れの懸念あり

レポートによると、298件中130件が「鋼製平面化工法」を採用しており、最も一般的な方法となっています
※レポートでは「鋼板平面化」と表記されていますが、実務上は「鋼製平面化工法」と呼ばれることが多いです。

工事のあとはどう活用されている?

平面化工事のあと、そのスペースがどう使われているかというと、94.9%がそのまま平置きの駐車場として利用されているとのこと。
その他には、駐輪場や緊急車両スペースなどに使われている例もありました。

また、駐車台数が減る場合でも、工事前に契約していた車両が引き続き駐車できるように配慮しているケースが多く、混乱は比較的少ないようです。

合意形成には丁寧な準備が必要

もちろん、すべてがスムーズに進むわけではありません。総会の議案書や議事録には、次のような反対意見も記録されています。

  • 「購入時に1戸1台と説明されたのに…」
  • 「資産価値が下がるのではないか」
  • 「まず外部貸しなどの対策をすべきでは?」

こうした声に対し、管理組合が対応策を講じた事例も紹介されています。

  • 敷地外の駐車場を借り上げて転貸し、差額を補助
  • 空きが出たら優先的に再割り当てする制度を導入
  • 隣接地を法人として購入し、平置き駐車場を整備

実際には、合意形成に時間をかけながら丁寧に検討した結果、平面化に踏み切った組合が多いというのが実情のようです。

まとめ

機械式駐車場の平面化は、2021年の時点で全国のマンションの約15%で実施済みというデータが出ており、もはや“珍しいこと”ではなくなっています。背景には、空き区画の増加や将来の修繕費負担への懸念、安全性への不安といった共通の課題があります。
そして2025年の今、車離れやEVの普及、カーシェアの拡大など、駐車場を取り巻く状況はさらに変化しています。今後も「平面化工事をどう進めるか」は、多くのマンションで避けては通れないテーマとなっていくはずです。
すでに検討を始めている管理組合も、これから考えるという方も、「平面化」はもはや“前向きな選択肢のひとつ”として、しっかり向き合う時期がきているのかもしれません。

PAGE TOP