
近年、若者の車離れやライフスタイルの変化により、マンション内の機械式駐車場に空きが目立つようになってきました。稼働率が下がれば、駐車場収入の減少によって管理組合の財政にも影響が出る可能性があります。この記事では、あるマンションで実施された「駐車場の縮小」と「料金改定」によって、住民の理解を得ながら稼働率を改善し、収入を維持した事例をご紹介します。この成功例から、持続可能な駐車場運用のヒントを学んでいきます。
若者の車離れで進む稼働率の低下
私が関わったある中規模マンションでは、機械式立体駐車場の稼働率が年々低下していました。今年の稼働率は約50%、特に不便とされる地下区画は30%未満にとどまっていました。すでに3年前からこの問題は理事会で議論されており、マンション全体の資産価値にも関わる課題として注目されていたのです。
修繕費を見据えて駐車場の一部撤去を決断
管理組合では、今後の長期修繕計画にかかる費用と照らし合わせながら、駐車場のあり方を検討。調査の結果、メンテナンスに費用がかかる地下や使用率の低い区画を撤去し、平置きに変更した方が、将来的な支出を抑えられると判断されました。こうしたコスト面での合理性と、住民が使いやすい駐車場を整備する意義が認められ、総会での賛成多数により一部撤去が決定しました。
利用者目線の料金改定で反発を回避
縮小によって懸念されたのが、駐車場収入の減少です。そこで導入されたのが価格改定。ただ単に値上げ・値下げをするのではなく、立地や利便性に応じたメリハリのある料金設定を実施しました。
区画タイプ | 改定前料金 | 改定後料金 | 備考 |
---|---|---|---|
地下区画 | 25,000円 | 10,000円 | 人気が低く思い切って値下げ |
平面化した区画 | 20,000円 | 25,000円 | 利便性が向上し値上げに |
エントランス近辺 | – | +5,000円 | 場所ごとに価格差を設け調整 |
このように、使われにくい場所は大胆に値下げし、人気のある場所は適正価格に引き上げるという住民目線の柔軟な価格設計が功を奏しました。
稼働率は改善、収入も維持
価格改定後、これまで空きが多かった地下区画にも新たな利用希望者が現れ、全体の稼働率が上昇。60台分のスペースを縮小したにもかかわらず、年間収入は前年とほぼ同水準を維持するという好結果につながりました。「使われる駐車場」へと見直すことで、稼働率と収入の両立が実現できたのです。
まとめ
マンションの機械式駐車場における空き問題は、今後さらに深刻になる可能性があります。しかし、今回ご紹介したマンションのように、利用実態を踏まえた区画の見直しと、適正な価格設定を同時に進めることで、稼働率の向上と収入の維持が両立可能です。住民の反発を恐れて現状維持を選ぶのではなく、将来の維持管理を見据えた柔軟な意思決定と丁寧な合意形成こそが、マンション管理における次の一歩につながるのではないでしょうか。