
マンションの機械式駐車場、特に地下ピット式では、雨水の流入リスクが常に存在します。さらに、地中からの湧水が流れ込む場合もあり、こうした水を排出するのが「排水ポンプ」です。普段は目に触れない設備ですが、故障すると駐車場や車両に深刻な被害をもたらす可能性があります。この記事では、機械式駐車場の排水ポンプの役割、作動の仕組み、故障時の影響、主な原因と対策、そして平面化後の管理上の注意点まで学んでいきます。
排水ポンプの役割と仕組み
機械式駐車場のピット部分は地面より低い位置にあるため、雨が降ると雨水が流れ込みやすく、加えて地下からの湧水が流入する場合もあります。このたまった水を外へ排出するのが排水ポンプの役割です。
排水ポンプは親機と子機の2台がセットになっており、負荷を分散させるため交互に作動します。この仕組みにより、ポンプの負担を減らし、効率的な排水が行われています。

排水ポンプが故障した場合の影響
排水ポンプが故障すると、以下のような影響が考えられます。
影響内容 |
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ピット内の水が排出されず、満水状態になる。 |
マンションによっては、満水警報が管理室や警備会社に通知される。 |
集中豪雨時や湧水の増加時には、最悪の場合、車両が冠水する恐れがある。 |
故障の主な原因とその影響
排水ポンプの故障原因には、主に次のようなものがあります。
原因 | 具体例・影響 |
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経年劣化 | ポンプ内部の部品が摩耗・老朽化し、排水性能が低下する。 |
落ち葉、ゴミ・砂詰まり | 雨水や湧水と一緒に流れ込んだ異物が詰まり、排水能力が落ちる。 |
油分の付着 | 点検作業中の作業油や駐車場から流れた油が内部に付着し、作動不良を引き起こす。 |
とくに落ち葉やビニール袋が排水口に詰まるケースは意外と多く、日常的な清掃が重要です。また、地下ピット内の排水ポンプが設置されている窯場にネットを取り付け、落ち葉の侵入を防ぐ対策を講じることも効果的です。

ただし、機械式駐車場の点検業者はピット内の清掃までは通常行わないため、管理会社との契約内容を確認し、必要に応じて清掃や点検を行うようにしましょう。
鋼製平面化工法の場合の重要な注意点
機械式駐車場を撤去して平面化する場合、特に鋼製平面化工法では地下ピットを埋め戻さないため、地下ピット内に雨水や湧水はたまるため、排水ポンプの点検は必要です。
しかし鋼製平面化した場合には、機械式駐車場と違って床面の隙間が最小限におさまるため、枯れ葉等が地下ピット内に入りこむリスクは減ります。


緊急時の対応とインターロック解除の重要性
内水氾濫とは、下水道や排水施設の処理能力を超える雨水が流れ込み、排水できずにあふれ出す現象です。この内水氾濫が発生すると、排水ポンプが正常に作動していても排水が間に合わないことがあります。
近年では、記録的な豪雨により短時間に大量の雨が降り、ポンプの排水能力を超える水が地下ピット内に流れ込むケースが増えています。このような場合、車両の冠水リスクが一気に高まるため、事前の対策や緊急時の対応が重要です。
そのため、管理組合の役員は、インターロックの解除方法を理解しておくことが重要です。インターロックとは、あるパレットが動作中は隣のパレットが作動しないようにする安全装置で、緊急時には専用の鍵を使って解除できます。
解除することで、全パレットを一斉に上昇させ、地下の車両を上階に避難させて浸水を防ぐことが可能です。
まとめ
機械式駐車場の排水ポンプは、普段目に触れないものの、ピット内の雨水や湧水を排出し、車両や施設の安全を守る重要な役割を果たしています。ポンプは親機・子機の2台で交互に作動し、効率的な排水が行われています。
しかし、経年劣化やゴミ詰まり、落ち葉・ビニール袋の侵入によるトラブルは意外に多く、放置すれば深刻な問題を引き起こします。さらに、鋼製平面化工法で駐車場を平面化した場合でも、地下ピットと排水ポンプは残るため、点検や管理は引き続き必要です。
加えて、記録的豪雨や内水氾濫といった緊急時には、排水が追いつかない場合があるため、管理組合としてはインターロック解除の方法を含め、緊急対応の準備を整えておくことが重要です。今後も安全で安心な駐車場運営を続けていくために、日頃からの備えと計画的な管理を心がけましょう。