
機械式駐車場の設備は、長期間にわたり安全かつ安定して利用するために、適切な時期での更新や解体の判断が欠かせません。
税法上の法定耐用年数は15年とされていますが、実際には使用環境やメンテナンス状況によって大きく左右され、20年以上使えるケースもあります。
一方で、老朽化による故障や維持コストの増加が見過ごせない問題となります。
本記事では、機械式駐車場の耐用年数に影響する要因や、更新・解体の判断基準、検討時に役立つチェックリストについて解説します。
機械式駐車場の耐用年数
機械式駐車場の法定耐用年数は15年とされています。これは税務上の減価償却を行うための指標であり、実際の使用可能年数とは必ずしも一致しません。
適切なメンテナンスを行うことで、法定耐用年数を超えて長期間使用することが可能となるケースが多く、通常は20年~30年は使用できるといわれています。
特にメンテナンスをしっかりとおこなって、使用環境が屋内の場合は、30年以上使用できることもあります。
機械式駐車場の耐用年数に影響を与える要因
機械式駐車場の耐用年数は、様々な要因によって影響を受けます。主な要因としては、以下の点が挙げられます。
<耐用年数に影響を与える要因>
- 立地条件:
寒冷地や海沿いなどの厳しい環境では耐用年数が短くなります。 - 設置環境:
湿気、埃、温度変化など、設置環境も耐用年数に影響を与えます。屋外に設置されている場合は、屋内に比べて劣化が早まる傾向があります。 - 部品の耐久性:
使用されている部品の品質や耐久性も重要な要素です。特に、パレットの耐久性が機械式駐車場全体の寿命に大きく影響します。亜鉛メッキ加工のパレットは、ペンキ塗装よりも長持ちします。 - メンテナンス状況:
定期的な点検・整備を行うことで、耐用年数を延ばすことが可能です。
設備の更新提案と実際の寿命
一般的にマンション管理会社や点検業者、機械式駐車場メーカーは、法定耐用年数の15年を基準に設備更新(リニューアル)の見積書が提出されることが多いですが、これは業者側にとって利益率の高い仕事であるため、比較的早めの周期で提案される傾向があります。
<実際の寿命を決める主な要因>
- 機械本体の老朽化:
経年劣化や使用による老朽化は避けられません - 部品供給の問題:
撤退メーカーや古い型式は補修部品の調達が困難になります - 修理費用の増加:
年数経過とともに故障頻度と修理費用が増加します

現場での経験からすると、適切なメンテナンス(パレットの塗替えや定期点検など)を行うことで、法定耐用年数の15年を超えて使用できることがほとんどです。しかし、一般的には20~25年程度を耐用年数の限界と考えるのが現実的です。2回目の大規模修繕工事の時期に機械の更新を検討するのが適切でしょう。
更新・解体の検討チェックリスト
以下のチェックリストは、機械式駐車場の更新(リニューアル)または解体平面化を検討する際の参考になります。なお、事故の発生が予期できる場合には、チェックリストの結果にかかわらず、即刻対応が必要です。
要件 | 緊急度 | 備考 |
---|---|---|
利用状況 | ||
利用者が少ないため、地上の平面部分だけを使用中 | 中度 | 機械式駐車場設備は、日常的にパレットを上下させないとモーターや駆動部が劣化する。また、湿気が地下ピットに溜まり劣化が加速する。 |
パレットを溶接等で固定して使用中 | 高い | 使用していないパレットを溶接等で固定しているケースが散見される。こうした処置の寿命は、2~3年が限度とされているため設備の更新や解体を検討する。 |
コスト | ||
維持費用が使用料収入を上回る | 高い | 分譲マンションの場合には、駐車場の収支は会計区分が独立していないケースが多く把握が困難。決算書等で収支を確認する。 |
設備入れ替えの見積書が届いた | 高い | 設置後15年頃に、メーカーや点検業者から設備の入れ替えの「見積書」が届いて、資金が足りないことに気付くことも。解体も選択肢に入れて対応を検討する。 |
月額使用料が1万円以下である | 高い | 経年化と共に月額使用料で設備の維持管理費用が賄えなくなる金額。これ以上「空き」が増えれば、駐車場収支の赤字化が必至。 |
設備の更新費が不足する見通しである | 低い | 前もって将来の更新(リニューアル)費用が足りないことに気がつけば手が打てる。早めに対応を検討する。 |
老朽化 | ||
老朽化が原因による事故が発生 | 即時 | 重大事故が発生してからでは対応が遅すぎる。オーナーの責任が追求される可能性があるため、即時、対応が必要。 |
パレットや鉄骨に錆がある | 高い | 錆が雨水などで、駐車車両に落下して起きる「もらい錆」の被害の恐れも。設備を目視で確認して対応を検討する。 |
トラブルによる点検業者の出動件数が増加 | 高い | 故障の増加は老朽化が原因の恐れも。駐車場利用者の出勤などに支障が生じる恐れもあるため「メーカー」や「点検業者」に改善策を相談する。 |
設置から20年以上経過 | 中度 | 老朽化による補修費用の増加、修理部品が供給されないといった問題があるため、設置後20年を経過した頃には設備の入れ替えや解体を検討する。 |
安全装置のない旧式の駐車装置 | 低い | 機械式駐車場での事故を受け、新規の駐車場にはゲートなどの安全装置の取り付けが義務付けられている。安全を確保するために「メーカー」や「点検業者」と対策を検討する。 |
まとめ
機械式駐車場の法定耐用年数は15年とされていますが、実際には20~25年使用できるのが一般的です。
メンテナンス状況が良ければ延命も可能ですが、老朽化や部品の供給停止、修理費用の増加といった課題は避けられません。
更新や解体の判断は、利用状況・維持コスト・将来の需要などをもとに、現実的に検討する必要があります。
とくに2回目の大規模修繕の時期には、設備の将来について理事会で方針を決めておくと安心です。住民の理解を得るためにも、早めの説明・合意形成が欠かせません。
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- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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