
「えっ、自分が理事に?」
多くの方がそう感じるのは当然のことです。
マンションの理事は、専門知識が必要に思われがちですが、実際にはそのほとんどが初めての経験者。
特に輪番制のマンションでは、「やりたくてなったわけじゃない」という声も珍しくありません。
でも安心してください。理事の仕事は、すべてを完璧にこなすことではありません。
まずは“知ること”から始めて、できることを一つずつ積み重ねていけば十分です。
老朽化が進む機械式駐車場の見直しなど、住まいの将来を考えるうえで大きなチャンスにもなります。
この記事では、そんな理事初心者の方が無理なくスタートできるよう、【5つのステップ】に分けてわかりやすく解説します。
ステップ1:前任理事からの引き継ぎと、管理規約を確認しよう
理事になって最初に行うべきは、「引き継ぎ資料や基本ルールの確認」です。
まずは、マンションを運営するうえでの“設計図”をしっかり把握しましょう。
確認しておきたいポイント
項目 | 内容 |
---|---|
前回理事会の議事録 | どんな課題があったか、途中になっている議題はないか |
管理規約 | 管理組合のルール全体(法律のような存在) |
使用細則 | ゴミ出し・ペット・駐車場など、具体的な生活ルール |
総会の議案書・議決書 | 大きな決定がどう合意されたか |
引き継ぎ資料がなかった場合は、管理会社に「過去の議事録」「規約一式」「現在の懸案事項」などの提供を依頼しましょう。
また、機械式駐車場に関しても、使用細則に次のような内容が記載されていることがあります:
- 利用可能な車種のサイズ制限
- 故障時の対応ルール
- 外部貸しの可否
- 利用区画の割当方法

まずは“何が決まっていて、何がまだ決まっていないか”を知ることが大切です。過去の議事録や使用細則を読むだけで、“理事として今どこに立っているのか”が自然と見えてきますよ。
ステップ2:管理会社との役割分担を明確にしよう
多くのマンションでは、日々の管理は管理会社に委託されています。
理事の仕事は、その業務を確認・評価し、必要な調整を行うことです。
管理会社に確認しておきたいこと
項目 | 内容 |
---|---|
委託契約の範囲 | 管理員の業務、清掃、設備点検など |
担当者との連絡手段 | 定期報告の頻度、緊急時の連絡先 |
トラブル時の対応 | 対応スピード、再発防止策など |
駐車場関連の契約 | 機械式駐車場の点検頻度、契約形態(POG/FM) |
特に機械式駐車場の点検の回数や、保守契約の内容について確認しておこう。
ステップ3:建物と設備の状態をチェックしよう
理事の役目は「住み心地」と「資産価値」の維持。
そのためには、建物と設備の状況をしっかり把握する必要があります。
見るべき資料とチェック内容
資料 | チェックすること |
---|---|
修繕履歴 | 最近の修繕内容と時期 |
長期修繕計画 | 今後の修繕予定と予算計画 |
修繕積立金の推移 | 積立状況、赤字リスクの有無 |
点検報告書 | エレベーター、駐車場、配管などの劣化状況 |
中でも機械式駐車場は、大規模修繕や突発修理で数十万円以上の費用がかかることもあり、空き区画が多い場合は「使っていないのに費用だけかかる」状態に陥っている可能性もあります。
ステップ4:ルール整備でトラブルを防ごう
マンションでは、細かなルールが共有されていないことでトラブルが起こりやすくなります。
理事会として、既存のルールの見直しや周知を行うだけでも、大きな改善になります。
よくある見直しポイント
- ゴミ出しや騒音に関するマナー
- ペットの飼育条件
- バルコニーや共用廊下の使用制限
- 駐車場の外部貸しや利用優先順位
使用細則の記載内容と、実際の運用にズレがないかを見直すのがポイントです。
ステップ5:防災・防犯対策を確認しよう
最後にチェックしておきたいのが、マンション全体の「安全対策」です。
火災や水害、空き巣など、非常時に住民の安全を守る仕組みがあるか確認しましょう。
項目 | チェック内容 |
---|---|
防災 | マニュアル、避難経路、備蓄の有無 |
火災対策 | 消火器、火災報知器、避難器具 |
防犯 | カメラ、照明、オートロックの動作確認 |
水害対策 | 地下機械式駐車場の止水板・排水ポンプ |
特に地下にある駐車場では、集中豪雨などによる冠水リスクが高まっています。
設備の点検と併せて、共用部の保険の内容も確認しておきましょう。
まとめ
理事になったばかりのときは、誰もが不安を感じるものです。ですが、最初にやるべきことは決して難しくありません。
まずは、前任理事からの引き継ぎや管理規約の確認で、現在の状況を正しく知ることからスタートしましょう。
管理会社の担当者と連携しながら、建物や設備の状態を把握し、必要なルールや安全対策を少しずつ整えていけば、理事としての役割が自然と形になっていきます。
特に注意したいのは、老朽化が進みやすく、維持費がかさむ機械式駐車場の扱いです。
修繕か、平面化か、撤去か――いずれ選択が必要になる場面では、日ごろからの把握と準備が理事会の判断を支えます。
理事の役目は、すべてを完璧にこなすことではなく、「暮らしをよくする一歩」を後押しすること。
その積み重ねが、きっと「このマンションに住んでいてよかった」と思える暮らしにつながっていきます。
投稿者プロフィール

- 機械式駐車場の維持管理・リニューアル・解体平面化等に関する専門的な情報提供や、無料コンサルティングを行っています。複雑で不透明になりがちな分野だからこそ、皆さまが納得して判断できるよう、わかりやすく中立的な支援を心がけています。
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