
機械式駐車場の解体や平面化を検討するときは、費用負担や駐車可能台数の減少といったマイナス面にもきちんと目を向けることが欠かせません。
とりわけ、工事費の拠出、工期中の代替駐車先の確保、そして附置義務条例への適合などは、理事会が丁寧に吟味すべき重要ポイントです。一方で、老朽化に伴う事故リスクの高まりや保守費の膨張を織り込むと、長い目で見て平面化が理にかなうケースもあります。
近年、マンションの機械式駐車場は維持管理費の上昇や自家用車保有率の低下を背景に稼働率が落ち、撤去を検討する管理組合が増えています。
この記事では、機械式駐車場の平面化工事に至るまでの手順や留意点を整理し、管理組合や住人にとってのメリット・デメリットを幅広く検討します。
- 1. 機械式駐車場の利用率低下の背景
- 1.1. 車両サイズの大型化や所有率の低下問題
- 1.2. 機械式駐車場維持コストの負担が増加
- 2. 機械式駐車場を撤去する前に確認すべきポイント
- 2.1. 駐車可能台数の減少
- 2.1.1. 利用状況を見極めて設備毎の優先順位をつける
- 2.2. マンション管理組合の特別決議の必要性
- 2.3. 自治体の附置義務条例の確認
- 2.4. 代替駐車場の確保と費用負担
- 2.5. マンション全体の長期修繕計画も確認しておこう
- 3. 機械式駐車場の平面化の主な工法と手順
- 3.1. 鋼製平面化工法のメリット/デメリット
- 3.2. 埋め戻し工法のメリット/デメリット
- 3.3. EPS工法・コンクリートスラブ工法EPS工法
- 4. 解体・平面化工事業者の比較と選定のポイント
- 4.1. 平面化工事の費用と見積り取得時の注意点
- 5. 機械式駐車場の撤去後に考えられる活用事例
- 5.1. 平置き駐車場にした場合のメリット
- 6. 機械式駐車場を解体平面化するメリット・デメリット
- 6.1. 【平面化メリット】維持費圧縮と安全性向上
- 6.2. 【平面化デメリット】初期負担と台数減のリスク
- 7. 解体・平面化における住人トラブル予防
- 8. まとめ
機械式駐車場の利用率低下の背景
なぜ、機械式駐車場が時代の流れとともに使われにくくなっているのか、その背景を確認します。
限られた敷地に多くの車両を収容できるのが機械式駐車場の強みでしたが、近年は車の所有形態の変化や車両の大型化により、機械式駐車場の利用者数が右肩下がりになっています。
都市部では公共交通の利便性向上やカーシェアの普及により、「車を持たない生活」を選ぶ人が増加。これが駐車場の稼働率低下につながり、管理組合にとって安定した収益確保が難しくなる一因となっています。
加えて、機械式ならではの定期点検や修理といった日常的なコストの他に、大規模修繕や更新(リニューアル)ではさらに高額な費用が重くのしかかっています。
その結果、財政的負担を感じる管理組合が増え、マンションの資産価値維持の観点からも、機械式駐車場の撤去して平面化の早期検討が進んでいるのが実情です。
実際に、大手マンション管理会社の調査によると、全国で同社が管理する3,994件のマンションのうち、約半数にあたる2,039件が機械式駐車場を導入しており、そのうち約15%(298件)で平面化工事が実施済みです。
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マンション機械式駐車場の平面化が急増中。15%が既に実施、高額修繕費や空き区画増加が主因。選択肢として一般的に。
車両サイズの大型化や所有率の低下問題
車両の大型化に伴い、従来設計の機械式駐車場では車高や車幅が合わず入庫できない事例が生じています。停めにくい駐車場は満足度を下げ、契約率の低下を招きます。
さらに、少子高齢化やライフスタイルの転換も重なり、そもそもマイカーを保有しない世帯が増えたことが、利用率低下を一段と加速させています。
機械式駐車場維持コストの負担が増加
機械式駐車場は、定期点検が不可欠で、専門業者への固定費用が発生します。また、装置の老朽化が進むほど修繕費は増大し、管理組合の予算を圧迫する大きな要因となります。
利用率が落ちれば賃料収入は縮小する一方で、維持費は老朽化と共に上昇し、管理組合財政へのインパクトはより深刻になります。
機械式駐車場を維持し続ける限り、年間で数十万円規模の保守費用や、部品供給の打ち切り・装置更新(リニューアル)といった将来リスクがつきまといます。
こうした前提を踏まえると、初期費用を投下してでも平面化へ舵を切ることが、トータルではコスト縮減につながる公算が高いと言えます。
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機械式駐車場を撤去する前に確認すべきポイント
機械式駐車場の撤去に着手する前に、管理組合や住人への配慮が必要な事項を整理しておきます。
機械式駐車場の撤去は、共用部分に大きな変更を伴うため、住民の理解と同意が不可欠です。とりわけ現在利用している方への影響が大きくなることがあり、丁寧な意見聴取と説明が求められます。
さらに、撤去後の駐車台数の確保や財政面など、検討すべき要素は多岐にわたるため、計画段階から綿密なシミュレーションが重要です。
加えて、地域ごとの駐車場附置義務など、法規上の要件をクリアする必要もあります。仮に緩和申請が可能でも、手続きには時間を要することがあるため、自治体の取り扱いや条件を早めに確認しておくとスムーズに進められます。
駐車可能台数の減少
機械式駐車場は上下・左右に積層する構造上、駐車台数は確保されます。一方で平面化すると台数が減るのは避けられません。このことが、機械式駐車場の平面化工事を諦めざるを得ない最大の理由です。
もっとも、敷地内の機械式駐車場の一部を平面化する方法で、必要な駐車台数を確保できるケースが大半です。
利用状況を見極めて設備毎の優先順位をつける

上図のように敷地内に複数の機械式駐車場がある場合、特定の機械式駐車場設備のみを平面化することが技術的に可能です。
こうしたことを踏まえると、空き区画が多くて利用されていない設備から優先的に解体・平面化を進めるのが合理的です。
使われていない設備に点検や修繕といった維持コストをかけ続けるよりも、需要にあわせて、不要な機械式駐車場を撤去して平面化することで、管理費や修繕積立金の節約につながります。
マンション管理組合の特別決議の必要性
機械式駐車場の撤去は、管理規約や区分所有法上の「共用部分の変更」に該当するのが一般的です。
このため、総会での特別決議が必要となり、所定の賛成多数を得る手続きが求められます。住民説明会やアンケートなどを活用し、合意形成のプロセスを粘り強く丁寧に進める姿勢が重要です。
自治体の附置義務条例の確認
附置義務条例とは、一定規模の建築物に対して必要台数の駐車場設置を自治体が求める制度です。大都市圏などでは、建物に一定数の駐車スペースを設けるよう義務付けられている場合があります。
当該マンションがこの条例の対象であれば、平面化後に最低台数をクリアできるか確認が必要となります。検討初期の段階で自治体へ相談し、附置義務の適用範囲や緩和条件を把握しておくことが肝心です。

近年では車離れや駐車需要の変化に伴い、自治体によっては、駐車場の用途変更や台数削減に関する特例措置を設けています。そのため、事前に自治体に相談し、必要な手続きを行うことで、問題なく対応できるケースが増えています。
代替駐車場の確保と費用負担
工期中は既存スペースが使えなくなるため、代替駐車先の手当てが必要です。機械式駐車場の解体平面化は、大規模修繕工事(建物の屋上防水や壁面塗装等)と比較すると、工事期間が短期間のため、
近隣の月極を一括手配するより、各自が周辺の時間貸し(コインパーキング等)を利用し、後日精算する運用が一般的です。
いずれの方式でも、代替駐車場の費用をあらかじめ見込んでおく必要があります。

規模によって異なりますが、工期はおおよそ10日〜1ヶ月程度であることが多く、長期間にわたるケースはまれです。事前に近隣のコインパーキングの調査や、精算方法の取り決めをしておくことで、スムーズな対応が可能になります。
マンション全体の長期修繕計画も確認しておこう
機械式駐車場の撤去に伴い、長期修繕計画全体の見直しが必要となる場合があります。大規模修繕工事のタイミングと平面化工事を合わせることで、コストや工期の重複を避けられる可能性もあります。
長期的な維持費や予算を念頭に置きながら、マンション全体の計画を合わせて平面化を検討していくことが大切です。
機械式駐車場の平面化の主な工法と手順
既存の機械式駐車場を撤去して平面化する際の代表的な工法と、一般的な進め方を紹介します。
工事では、事前に解体をおこなう装置の駐車車両の移動を行おこない、装置の使用停止をおこないます。そして、安全対策をおこなった上で、機械式駐車場の部材の解体撤去を進めます。
大型重機が搬入できる環境では、ラフタークレーン車等で解体した部材を釣り上げて搬出トラックに積み込みます。

大型重機が搬入できない狭い場所では、部材を細かく切断したうえで、カニクレーン等の小型重機や、手作業で小型トラックで搬出します。

解体撤去工事の期間中は、騒音・振動を伴う期間があるため、住人や近隣への事前の周知とスケジュールの共有が不可欠です。
近隣への配慮と安全対策ができる業者を選ぼう
解体工事では、騒音や粉じんの発生によって近隣住民へ不快感を与えることがあります。そのため、ごみや砂ぼこりの飛散を防ぐための養生シートを設置したり、工事の工程や作業時間を事前に周知して理解を得るなど、周囲への配慮が欠かせません。こうした丁寧な説明やきめ細かな対応を行う業者を選ぶことで、トラブルを防ぎ、工事をスムーズに進めることができます。
解体後は跡地を清掃して平面化工事へとステップを進めます。

平面化については、次で説明するように複数の工法があります。予算や施工環境にあわせて、最適な工法を選定することが重要です。
鋼製平面化工法のメリット/デメリット
機械式駐車場を撤去して空になった地下ピットに新たに鋼製の柱や床を架設して平面を形成する方法です。軽量の鋼製部材を採用することによって、鋼材の重量は元の機械式駐車場装置のおよそ半分であるため、地盤への悪影響は生じません。

したがって、屋内や屋外、地盤の良し悪しといった環境を選ばずに施工できることが鋼製平面化工法の最大のメリットです。また、現場では、工場で加工済みの部材を組み上げるため、埋め戻し工法と比較して、工期短縮が見込めます。
ただし、長期的にみると、床板の防錆や塗装といったメンテナンス費用がかかります。また、地下ピット内部の排水用ポンプユニットは存置されるため、当該設備のメンテナンスは継続する必要性があります。
埋め戻し工法のメリット/デメリット
地下ピット空間に土砂や砕石を充填し、その上にコンクリートやアスファルトを敷設して平面化する方法です。

埋め戻し工法は、鋼製平面化工法と比較して工事費用が安価であることが多い一方で、大量の砕石荷重が周辺地盤に悪影響を及ぼす懸念があります。また、地下ピットを埋め立ててしまうため排水計画や雨水処理に配慮する必要があります。
屋内の駐車場や、地盤が悪い、地下水位が高い地域では、施工ができないケースが多いのがデメリットです。
また、施工の可否に関する判断をおこなうのは理事会では難しいので、建築士や、設計事務所等の専門家に相談にのってもらう必要があることが、埋め戻し工事を実施するまでのハードルとなっています。
EPS工法・コンクリートスラブ工法EPS工法
鋼製平面化工法や、埋め戻しの他にも「EPS工法」「コンクリートスラブ工法」といった平面化工法もあります。
この2つの工法は、前述の2つの工法と比較して工事費用が割高になるケースが多いほか、機械式駐車場の平面化工事における実績が極めて少ないため、採用する管理組合は少数に留まります。
平面化工事での実績の少ない、この2つの工法を採用する場合には、建築士や設計事務所等の専門家にデメリットやリスクを確認した上で採用することが望ましいでしょう。
解体・平面化工事業者の比較と選定のポイント
工事業者を選定する際には、平面化工事に関する施工実績や自社施工の有無を必ず確認しましょう。加えて、管理組合への対応力やアフターサポートの充実度も重要な判断基準となります。
見積金額だけでなく、安全対策や使用部材の品質にも注目が必要です。経験豊富な工事業者であれば、機械式駐車場の撤去から平面化までを一貫してスムーズに進めるノウハウを持っています。
相見積りを行う場合は、施工範囲や材料グレードなどの条件をできる限り統一して依頼することが大切です。同一条件で比較することで、価格やサービス内容の違いが明確になり、公平で納得感のある判断につながります。
契約時には、工期・追加費用の扱い・保証内容などを明記した書面を取り交わし、想定外のコスト発生を防ぎましょう。
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平面化工事の費用と見積り取得時の注意点
ここでは、平面化にかかる費用の考え方と、見積取得時に確認すべきポイントを整理します。
解体と平面化を合わせた総費用は、採用する工法や現場条件によって大きく異なりますが、一般的には1車室(1列)あたり80万円〜200万円程度が目安です。施工環境による解体の難易度や採用する工法の違いにより、見積金額には大きな幅が生じます。
また、工事業者によっても価格差が大きいため、複数社から相見積りを取得して比較検討することが望ましいでしょう。その際は、仕様を統一したうえで見積依頼を行うことが重要です。見積書の内訳が不明確な場合は、仕様や条件を明記するよう業者に依頼しましょう。
さらに、竣工後の保証内容やアフターサポートの範囲についても確認が必要です。使用される部材のスペックや品質によっては、将来のメンテナンス費用に影響が出ることがあります。初期費用だけで判断せず、ライフサイクル全体でのコスト試算を行うことが理想です。
機械式駐車場の撤去後に考えられる活用事例
機械式駐車場を撤去さいた後の平面スペースをどのように活かせるか、代表的なケースを紹介します。。
最も一般的なのが平置き駐車場として再整備する方法です。機械式駐車場と比較して、より広い駐車スペースを確保しつつ、機械操作が不要になり、日常の駐車が容易になることから、利便性と満足度の向上にもつながります。
近年は、平面化した跡地を駐輪場や倉庫を設置したり、EV充電スペースとして活用する事例も増えています。資産価値の向上や収益拡大を図れるだけでなく、暮らしの利便性を高める可能性もあります。
平置き駐車場にした場合のメリット
機械式駐車場を撤去した空間をそのまま平置き駐車場に転用すれば、駐車のしやすさが大きく向上します。利用者による機械操作に伴う待ち時間やトラブルが減り日常的なストレスを減らす効果がある他、点検費用や修理費用が発生しないため管理コストの負担軽減にも寄与します。
機械式駐車場を解体平面化するメリット・デメリット
機械式駐車場を撤去して平面化する利点と、注意すべき点を把握しておきます。
最大のメリットは、設備の維持管理にかかる恒常的コストを抑制できることです。定期点検・修理・設備の入れ替えが不要となるため、長期的には大幅なコスト削減が見込めます。
また、平面化後は、故障といった不具合がでることが下がることで安全性が高まり、管理組合・住人に安心感をもたらします。
一方で、平面化する場合には、工事費や計画立案にかかる時間など、一時的な負担は避けられません。さらに、平面化後の駐車台数が従来より減少するため、将来の需要や収益のバランスを見据え、慎重な判断が求められます。
【平面化メリット】維持費圧縮と安全性向上
定期点検や修理費用が不要となるため管理コストを大きく圧縮でき、管理組合の財政負担を軽減します。また、装置の誤作動・故障に伴う事故リスクも低減し、利用者の安心につながります。結果として、資産価値や住人満足度の向上が期待できます。
【平面化デメリット】初期負担と台数減のリスク
解体・平面化工事の初期投資や、工事に伴う騒音・振動など、住人への一時的負担は不可避です。加えて、十分な台数が確保できない場合には、従来の駐車場収入や利便性が損なわれる恐れがあります。将来需要を踏まえた台数検証や代替策の準備を並行して行うことが重要です。
解体・平面化における住人トラブル予防
機械式駐車場の解体平面化による、想定トラブルの予防策を考えます。
平面化の是非をめぐる議論は、住民間の意見対立を招く可能性があるため、公平性と透明性の高い運営が求められます。
合意形成プロセスを適切に踏むことで、将来の苦情や紛争を未然に防ぎやすくなります。意見集約の仕組みとして、アンケートや説明会の活用が有効です。
また、平面化後の利用ルールや料金体系の見直しが必要になる場合もあります。管理規約や使用細則の整備を含め、変更の理由や過程を住人に早めに共有することで不安の軽減につながります。
まとめ
機械式駐車場の解体・平面化には、高額な初期費用や台数減、附置義務といった課題が伴いますが、老朽化による故障リスクや将来の維持費を加味すれば、長期的に平面化が合理的となる事例は少なくありません。特に利用率が下がっている場合、コスト削減効果は大きくなります。
検討にあたっては、住民合意や法的要件、長期修繕計画への影響など、多角的な視点が不可欠です。平面化後の活用方法を明確にし、利点と留意点を共有することが、スムーズな合意形成につながります。加えて、複数社の見積りを比較し、費用対効果まで含めて総合判断することが重要です。
撤去・平面化は一時的な負担を伴う一方、長期の維持管理コスト削減や資産価値の向上が見込めます。将来の駐車需要や新たな収益化の可能性も織り込み、総合的なシミュレーションを通じて最適策を選択することが求められます。
大切なのは、問題を棚上げにせず、現状を正しく把握したうえで、理事会が前向きに決断し、将来の安心と利便性を見据えて行動することです。検討の過程ではコミュニケーションを重視し、住人と管理組合が同じ方向を向いて取り組むことが、成功への鍵と言えるでしょう。















