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理事長が交代しても大丈夫! 機械式駐車場の「資産価値」を守る引き継ぎ・ファイリング術

理事長が交代しても大丈夫! 機械式駐車場の「資産価値」を守る引き継ぎ・ファイリング術

マンションの管理組合役員(理事)は、1年〜2年ごとの輪番制で交代するのが一般的です。 しかし、機械式駐車場の維持管理においては、この「交代時の情報共有」が重要な課題となることがあります。

  • 「前任者は修理が必要と言っていたのに、新しい理事長は聞いていない」
  • 「同じ部品を数年前に交換した記録がない」

こうした情報の断絶は、適切な時期での修繕判断の遅れや、業者とのやり取りにおける情報の非対称性を生む原因になり得ます。誰が理事長になっても過去の経緯に基づいて適切な判断ができるよう、確実な引き継ぎシステムを構築しましょう。

継承すべき「重要書類」4つのカテゴリー

次の理事会に物理的に引き継ぐべき書類は、以下の4点です。これらが不足していると、管理状況を客観的に判断する基盤が弱まります。

  • 契約書一式(覚書を含む)
    基本契約書だけでなく、「仕様書」や、途中で金額が変わった場合の「変更覚書」もセットです。契約内容(フルメンテかPOGか、免責事項は何か)は、すべての判断の基準になります。
    【重要】 機械式駐車場の契約が管理会社との 一括契約 になっている場合、 個別の契約書や仕様書がない場合があります。 その場合は、管理会社に対し、契約書や仕様書、点検・修繕の 委託内容に関する詳細な資料の提出を求め、保管してください。
  • 保守点検報告書(過去5年分)
    直近のものだけでなく、最低でも過去5年分は保管してください。「徐々にチェーンが摩耗している経過」や「特定のパレットだけエラーが多い傾向」などを傾向として読み取るためです。
  • 修繕工事の「見積書・請求書・完了報告書」
    点検報告書とは別に、部品交換や修理を行った際の記録です。「いつ」「どこを」「いくらで」直したか。これが資産の状態を示す重要なデータとなります。
  • 【重要】竣工図書(完成図)
    新築時に管理室等に保管されているはずの図面一式です。普段は見ませんが、将来の「更新工事(リニューアル)」や、業者が倒産して他社に切り替える際に、この図面がないと調査費が追加で発生する可能性があります。管理室のどこにあるか必ず確認してください。

「修繕履歴一覧表」の作成が効果的な防衛策

紙の報告書をファイルに綴じるだけでは、必要な情報を探すのに時間がかかります。過去の修理履歴を検索できるように、エクセルなどで簡単な「履歴一覧表」を作成し、更新していくことを推奨します。

必要な項目>

項目名
実施日2024/05/10
交換部品名駆動用モーター
金額950,000円
施工業者〇〇建設
備考(不具合の原因など)異音発生、保証期間外

これがあるだけで、業者が「モーターの交換時期です」と提案してきた際に、「履歴を見ると3年前に交換したばかりですが、交換が必要な理由は何ですか? 保証期間はまだ有効ではないですか?」といった、根拠に基づいた質問ができるようになります。これは無駄な出費を避ける上で極めて有効な方法です。

「交渉の経緯」を記録に残す

書類に残らない「口頭での約束」や「検討過程」も重要な引き継ぎ事項です。

  • 見積もりの値引き経緯
    「今回は特別に値引きします」と言われたのか、「相見積もりを取った結果下がった」のか。
  • 保留にした提案
    「油圧シリンダー交換を提案されたが、まだ使えると判断して来年に見送った」という記録。

これらをノートや引継書、あるいは理事会議事録に明記しておかないと、新しい理事が事情を知らずに「情報を十分に持たずに発注」したり、「修繕の判断を誤る」原因になりかねません。

物理的な「鍵」の管理も確認を

書類だけでなく、機械式駐車場の「制御盤の鍵(マスターキー)」や「操作盤の鍵」の引き継ぎも重要です。「管理員が持っているはず」と思い込んでいたら、実は前の理事長が持ったまま引っ越してしまった、というトラブルも散見されます。鍵の紛失はセキュリティリスクに直結し、シリンダー全交換で相応の費用が発生します。「鍵管理台帳」を作り、現物確認をして引き継ぎましょう。

コンサルタントの視点:データ化と「情報の帰属」

紙の書類は、世代交代のたびに紛失したり、管理室の奥底に埋もれたりしがちです。 現代の管理手法として、以下の対策を推奨します。

  • 全てPDF化してクラウドへ:
    重要な書類はスキャンしてPDF化し、管理組合専用のクラウドストレージ(Googleドライブなど)や、パスワード付きのUSBメモリで管理します。検索性が向上し、紛失リスクも軽減されます。
  • データの「管理組合への帰属」を明確にする
    「点検データや履歴は管理会社が持っていて、理事会は見せてもらうだけ」というケースが見受けられますが、これでは管理会社を変更する時にデータが引き継げない恐れがあります。「点検報告書と修繕履歴は管理組合の資産である」という認識を持ち、必ず原本または写しを理事会側で管理する体制を作ってください。

参考資料:マンション標準管理規約 – 国土交通省
2021年のマンション標準管理規約改正により、管理組合が作成・保管する書類の一部について、「電磁的記録」を用いた作成・保管が明確に容認されました。

電磁的記録による作成・保管の容認:
総会議事録や理事会議事録、管理規約、組合員名簿などの「図書」について、書面(紙)だけでなく、電磁的記録(電子データ)での作成および保管が可能であることが明記されました。(標準管理規約 第49条関係など)

まとめ

機械式駐車場の管理は、理事が代わっても継続する長期的な取り組みです。

  1. 契約書、点検報告書、修繕履歴、竣工図の4点を揃える(管理会社一括契約の場合は関連資料の提出を求める)。
  2. 「いつ何を交換したか」の履歴一覧表を作成する。
  3. 鍵の所在確認と、書類のデータ化を行う。

この仕組みを整えておくことで、あなたが理事を退任した後も、マンションの資産価値を適切に守り続ける基盤ができます。まずは手元のファイルを整理することから始めてみましょう。




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