
いつもお読みいただきありがとうございます。機械式駐車場の相談窓口です。 最近、私たちの窓口に、ある「切実なご質問」が急増しています。
それは、「鋼製平面化工法(こうせいへいめんかこうほう)の、この見積もり金額は適正なのでしょうか?」 というご相談です。
詳しくお話を伺うと、多くの場合がこのような経緯です。
「2年ほど前に一度見積もりを取って検討していた。今年に入り、いざ工事を進めようと業者に『再見積もり』を依頼したところ、以前とは比べ物にならないほど膨大な値上げ金額が返ってきた」
業者からの説明は決まって、「昨今の社会情勢による、人件費や材料費の高騰」です。
確かに、ニュースを見ればあらゆるモノの値段が上がっています。「値上げは仕方がないこと」だと、皆様も頭では理解されていると思います。
しかし、問題はその「中身」と「上げ幅」です。 本当にその金額は、原価高騰分だけが反映されたものなのでしょうか?
今回は、メーカー出身者の視点から、この「値上げの正体」について切り込みます。
「何が」そんなに上がっているのか?
まず、私たちがお伝えしたいのは、「値上げ自体は嘘ではないが、便乗していないか見極める必要がある」ということです。
チェックすべきは、見積もりの総額だけではなく、明細の項目です。
- 理解できる値上げ
「鋼材費」や「労務費」など、特定の項目が根拠をもって上がっている。 - 注意すべき値上げ
全ての項目が一律で、何十パーセントも上乗せされていないでしょうか?
もし後者であれば、それは根拠のある計算ではなく、「世の中が値上げムードだから、これくらい乗せても通るだろう」という、どんぶり勘定の可能性があるため注意が必要です。
メーカー時代の平面化の「リアルな数字」をお話しします

私が以前、平面化工法のメーカーに在籍していた時の、実際の価格感をお話ししますね。(※あくまで当時の目安です)
当時、私たちは鋼製平面化工法を、概ね「1車室あたり約120万円」で販売していました。
その後、2023年頃から世界的な「鋼材価格の高騰」が始まりました。メーカーとしても価格改定を余儀なくされ、鋼材費として約1割の値上げを行いました。
そこに、施工業者の手数料や、その他の諸経費の値上がり分を加味したとしても、せいぜい「1車室あたり150万円程度」までが、適正な上昇ラインだという肌感覚があります。
ここが重要なポイントです。 もし、皆様の手元にある再見積もりが、
- 「2年前の倍近い金額になっている」
- 「1車室あたり200万円を超えている」
ということであれば、それは単なる「物価高」だけでは説明がつかない、何らかの過剰な利益が乗せられている可能性があります。
そもそも「何のため」の工事ですか?
高騰した見積もりを目の前にした時、絶対に忘れてはいけないことがあります。 それは、「なぜ、いまある機械式駐車場を解体し、平面化しようとしているのか?」という原点です。
多くの管理組合様にとって、その最大の目的は「将来の維持費(メンテナンスコスト)の削減」のはずです。
平面化工事は、将来のコストカットのための「先行投資」です。 しかし、その初期投資(工事費)が法外に高くなってしまっては、元を取るまでに何十年もかかってしまいます。
「費用削減のために工事をするのに、工事費が高すぎて本末転倒になる」
これでは、何のための平面化か分かりません。
疑問に思ったら、必ず「相見積もり」を
「今は時代が違うから、高くて当たり前」 そう業者に言われても、決して鵜呑みにしないでください。
適正価格を知る唯一にして最強の方法は、「複数の業者から相見積もり(あいみつもり)を取得すること」です。
1社だけの見積もりでは、それが「相場」なのか「高値」なのか判断できません。 しかし、2社、3社と比べることで、「A社は倍になっているが、B社は1.2倍で収まっている」といった事実が必ず見えてきます。
もし、お手元の見積もりが「高すぎるのではないか?」「値上げの理由に納得がいかない」と少しでも疑問に思われたら、そのまま契約する前に、私たちにご相談ください。
メーカー出身者の視点で、その見積もりが適正範囲内か、あるいはもっと良い選択肢があるのか、セカンドオピニオンとしてアドバイスさせていただきます。
「納得感」のないまま、大切な修繕積立金を使うことはありません。一緒に適正な価格を見極めていきましょう。













